(どうしているかしら)
ふとした瞬間に思い出される。
ゴンドラに相乗りしただけの縁なのに。
切れることなく続いている、そんな気がした。
- シーン3 瑞穂の場合
ひどい事故。
けれど瑞穂には分っていた結末だった。
不意に浮かぶイメージはいつものこと。
伝えたところで回避できるとは限らない。
ゴンドラを降りたとき、静音の瞳に翳りが見えた。
そして雪に舞い散るバラの花びら。
止められなかった自分を責めることはない。
伝えるとも限らない。
ただ、あの時は口にした。
聞いてはもらえなかったけれど。
(厄介な力)
避ける力はない。決めるのはいつも自分以外の人間。
他人を動かすのは難しい。
ならいっそ見えなければいいのに。
大きな事故だったけれどニュースになることはなかった。
白壁の千賀家なら当然だろう。
あの時は知らなかったけれど同じエリアだけに話は伝わってくる。
あれから2年。静音の姿を見た者はいない。
どうやらまだ回復してはいないらしい。
「・・お節介は焼くものじゃないわね」
気になることはあったけれど、瑞穂はいつものように心にしまい込んだ。
だからだろうか。
2年経った今でもふと、思い出す。
一緒に居た沙耶香のことも。
(縁があったら、また会えるでしょう)
空を見上げて、そう思った。