互いに紹介が済み「あとはお若い方たちで」と残された。
金魚を模した水菓子を前に、真司が話しかけた。
「綺麗なお召し物ですね」
まっすぐこちらを射るように見つめる瞳が自分のそれに似ていると瑞穂は思う。
「ありがとうございます」
袖周りに金魚の刺繍が施されている振袖に視線を移しながら答えた。
社交辞令のような挨拶を数回交わして不意に本題に入る。
「あなたは僕と同じ、ですね」
核心を突かれて瑞穂も真司を見つめて答える。
「そうですわね。色々な意味で」
瑞穂が人をみるように、野中もまた人をみる。
互いに財閥の一族を繁栄させ続けるための能力だ。
そのことはお互いの家でも僅かな者しか知らされない。
見方を変えれば「主観で決める」ことに意を唱える者もいるからだ。
しかし何代にも渡り「みる」力を持つものがいるとき一族は栄えた。
そのことを知るものは瑞穂や真司の力を何よりも尊んだ。
「僕とあなたは寄り添えません」
確認するように、けれどはっきりと真司が言う。
「ええ、仰る通りです」
瑞穂もはっきり口にする。
「あなたはお相手をもう見つけていらっしゃるのでしょう?」
「そういうあなたにも、もうおられるようだ」
相手のことをみる力は自分には働かない。
瑞穂も自身のことに確信はなかった。