仮に間違いだったとしても私の知る事ではありません。そもそも今日は琢磨さんとの別れについて相談しにきたのです。今日改善の兆しが見られなければ泉さんとも今後関わることはないでしょうから問題ありません。
そうして琢磨さんの実家に戻り、お義母さまに会いに行こうとした時です。ある違和感に気付きました。廊下の棚の上にはいくつか写真が飾ってあり、若いころの泉さんの写真などもあります。
そこで思い出したのです。
「あれ……? 泉さんって女子大卒じゃなかったっけ?」
確かにそうでした。前に聞いた話では泉さんは有名な女子大を出ているはずです。そして棚の写真には泉さんの大学の門で撮ったと思われる卒業写真が飾ってありました。
校門にある文字は見えませんがこの校舎は確かに女子大のはずです。
では、あの卒業アルバムは誰のものなのでしょう?
琢磨さんは有名大学を出ていますし、泉さんは女子大。琢磨さんのお母さまの卒業アルバムにしては比較的新しいものでしたし、この家に他の家族や親族の方は住んでいません。
とても、嫌な予感がしました。私は逸る気持ちを抑えながらお義母さまに会いに行きました。
「あら清美さん来てらしたの? 今日はどういった用件ですの?」
「急にお邪魔して申し訳ございません。本日はお義母さまに折り入ってご相談があってきました」
「相談? 何かしら」
私は今までにあったこと、琢磨さんや泉さんからの酷い扱いについて抗議しました。これ以上は酷い仕打ちに耐えられない。別れることも検討していると。
「そんな、うちの琢磨や泉に限ってそんなこと」
「確かにお二人はお義母さまの前では良くしているかもしれませんが、見えないところではとても横暴な態度を取ってるんです」
「まぁ、そのような言い方は流石の清美さんでも見過ごせないわ。あの子たちは私が立派に育てた大切な子たちなんですよ? その二人が横暴だなんて」
お義母さまは私の言う事は信じてくれず、結局話は平行線でした。そこで私は気になっていることを問い掛けました。
「そういえばお義母さま、ひとつお伺いしたいことがあるのですが」
「なんでしょう?」
「私、琢磨さんは(有名な)〇〇大学を出たと聞いたのですが、本当は〇〇大学ですよね?」
その瞬間、お義母さまの目が逸れました。
「あら、どうしてそう思われるのかしら?」
「琢磨さんの友人の方から聞かされたんです。琢磨さんは本当は〇〇大学卒業だって」
嘘です。本当はさっき見た卒業アルバムしか根拠はありません。でもこういえば噓がばれていると諦めてくれると思い鎌をかけてみました。
「そう。ばれてしまったのなら仕方ありませんね。そうですよ、琢磨が〇〇大学を出ているというのは噓です」
「やっぱり……嘘だったんですね」
お義母さまは観念したように答えてくれました。学歴を良くした方がお見合いに都合がいいからそうしたと。