NOVEL

家にも外にも居場所がない vol.6 ~笑顔の下に潜んだ本性~

 

「ったく、お前の親はいちいち口うるせえなあ?」

「ごめんなさい、母が何か気に障ることでも?」

「今仕事はどうなのかとか、今後の発展はあるのかだの、いちいちつまらねえこと聞いて来てうざいんだよ」

「そう……なの。ごめんなさい、母には私から言っておきます」

「頼むぜまったくよ」

 

日に日に母の愚痴や私に対する不満を口に出すようになり、言動が荒くなっていったのです。もちろん、私にも至らない点はありますし、母にも問題はあります。

ですがそれだけではありません。

 

「おい」

「どうしたんですか?」

「肉を出すときはタレじゃなくて塩にしろって、前言ったよな?」

「ごめんなさい、ついうっかり」

「うっかりじゃねんだよ……俺の嫁になるんならそれくらい覚えとけよ」

 

そう言うと琢磨さんは机に箸を叩きつけて、外へ行く支度を始めました。

 

「あの、どちらへ」

「いきつけの店に行くんだよ。こんな飯食ってられるかよ」

「そう、ですか……ごめんなさい」

 

小さなことですぐ怒るようになり、自分の思い通りにならないとすぐ乱暴な態度を取るようになりました。休日のデートも少なくなり、仕事終わりに彼の家に家事をしにいくだけになっていたのです。

 

それに日頃の言動も変わっていきました。事あるごとに「俺の嫁になるなら」、「俺の嫁なんだから」と、まるでもう結婚したかのような態度で私に指図をしてくるのです。

確かに結婚を前提にお付き合いしていますし、ゆくゆくは結婚するつもりでした。ですが今はまだ籍を入れていませんし、お互いを知る期間だと思っていたのです。

自分のものかのように扱われるのはとても違和感があり、同時に苦痛でもありました。これではまるで家政婦と変わりません。