NOVEL

家にも外にも居場所がない vol.6 ~笑顔の下に潜んだ本性~

良家の娘として母親に厳しく育てられ、遊ぶ自由すらなかった清美。

そろそろいい歳だからと母からお見合いを持ち掛けられ渋々了承するが、自身の決断力のなさと母親の傲慢で束縛的な言動を理由に別れを切り出されてしまう。

失恋の悲しみに暮れる彼女を母は責め立て、清美の意志は無視して新たなお見合い相手を連れてくる。

結婚に消極的な清美に新たなお相手は積極的で彼女に猛烈なアプローチをしかけてくる。

自分とは対照的で引っ張ってくれる人に良い印象を抱いた清美だが、お付き合いは意外な方向へ流れて行くことに……。

 


前回:家にも外にも居場所がない vol.5 ~再チャレンジ~

 

琢磨さんとお付き合いを始めて3か月。彼はドライブが趣味という事で初めのうちは名古屋市内を軽く回るのが定番コースでした。徳川園や観光地を回ったり、ショッピングモールで買い物をしたりと、なかなか充実したデートでした。

 

彼は細やかな気遣いも忘れない方で、観光地などへ行った帰りには家族へのお土産などもよく買っていました。母は旅行というか街中を観光するようなことはしないタイプなので地元のお土産でも喜び、その度に嬉しそうに琢磨さんを褒めていました。

 

茶道を習っている母のために扇子を買って行った時は

 

「さすが琢磨さんは人のことをよく見てるわね~。相手が喜ぶものをよく分かってらっしゃるわ」

 

と大絶賛していました。

 

「お義母さまは休んでいらしてください。ここは私がやっておきますので」

 

家に来て夕食をご一緒する時も家事を手伝ったり、食器を片付けてくれたりと家庭的な面もみせてくれました。その姿に母はとても好印象を抱き、私もとても良い人なのだと思っていました。

ですが、半年を過ぎた頃から異変が起こりました。彼の家に通うようになり、夕食などを作るようになってからです。

 

「清美、食事の後片付け頼むわ」

「わかりました。今日の料理はどうでしたか?」

「んー、まぁまぁ」

 

最初は些細な事で、仕事で疲れているのだろうと思っていました。

でも違いました。