―唯一の、親友?―
そうだったのかぁ。
漠然と莉子は思った。
思うのは相手の勝手。
とも、すぐさま意識が書き換えられた。
白くて大きなドアーの奥には広い玄関が広がっていた。
洋風な内装には似つかわしくない、木彫りの動物やらどこかの国の神様らしき置物が、靴箱の上に飾られていた。
―相変わらず・・・―
そう思って、視線を落とした時だった。
耳心地の良い低音なのに、語尾の息が漏れて…セクシーな色香を感じる男性の声が降ってきた。
「こんばんは。お忙しいところ、有難うございます。」
全ての言葉の並べ方が、音が綺麗だった。
楽譜は読めないが、まるで音符が譜面に置かれていくような、しっかりとした音として言葉が響いてくる。
莉子は無意識に顔を上げ、その声の主の口元を見た。
美しいとはこういう動きを言うのだろう。
母音を丁寧に発した口の開き方と、どちらかに寄るわけではない均等のとれた筋肉の動き方。
坊さんたちよりも遥かに美しい。
そして、にっこりと口を閉じだと時の薄い唇。
莉子は初めて胸をつかまれた気がして、視野を広げた。
そこには、スラっとしたカジュアルなのに紳士的な黒い装いの男性が立っていた。
和風で端正な顔立ち。
―見つけた・・・―
莉子の体内を駆け抜けるような、大きな耳鳴りが走り抜けた。
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アンバランスな二人の私生活に飛び込んだ天然悪女、莉子。未だかつてない、欲望と刺激が唇を揺らす…