NOVEL

悪女 ~ Movement of the mouth ~ vol.10

どこから、どこまで…が、小枝子が仕組んだことなのか。

 

 

『莉子って天然悪女だよね。ヤルの好き?』

 

 

あの時、莉子は…。

「別に。そんなの、相手を喜ばせるパフォーマンスでしょ?」

 

と答えた。

 

『莉子が溺れる姿。見てみたい。』

 

そう言いながら、下品な引き笑いをした小枝子の口元が蘇る。

 

 

「ああ…そういう事かぁ…」

 

『恋は落ちるもの』

 

でも…その原理が解れば、興味を失うもの。

 

 

莉子は、脱ぎ散らかした下着を身にまとい、バスルームを掃除している昭人のところに向かった。

準備よく、莉子が使っているフレグランスの入浴剤まで用意されていた。

 

「ねぇ、昭人さん。小枝子の事も、あんな風に抱いたの?」

 

昭人の手がとまり、僅かな動揺は見られたが、流石は起業アドバイザーだ。

見てくれ、外面、そしてその演技力で、深いため息をついて全てを相殺した。

 

「なんだよ、そんな話、したくないなぁ…せっかく…」

 

昭人の瞳に映った莉子は、さっきまでの生娘のようでいて、でも欲に落ちて溺れていく女ではなくなっていた。

 

冷たい眼差し、少し歪めた唇。

明らかに、軽蔑を現している立ち姿。

 

「莉子?」

 

流石の昭人の声も上ずり、唇が異様な形に歪んだ。

 

「楽しかった?ゲームは…。遊川昭人さん。神楽小枝子との賭けは、貴方の勝ち?…それとも、負け?」