「此処?」
「ああ、そうだよ。」
そういうと、昭人が荷物を先におろし、数段の階段を上りドアーの鍵を開けた。
「ちょっと、換気しないと。」
そういうと、窓を開けてから、車を車庫に停めてくるから好きに見ていてと告げて出ていった。
莉子は素直に感動していた。別荘があると口説かれ、写真を自慢気に見せる輩は多いが、実際に連れては行かない。
別宅を愛人に買い与えても、別荘となれば家族が関係してくる場所だ。
そこに立ち入る感動は、しかも初めて恋をしている相手の懐に入り込む時間は、格段に違う。
釣りが趣味だけあって、釣り用具なども飾られていた。
莉子は、4部屋程あった室内を周り、窓を開けるついでにベッドルームを確認した。
木製のダブルベッドには、ブラウンを基調としたシーツが掛けられている。
莉子は、ベッドに腰を掛けると、開けた窓から流れ込んでくる自然の香りに酔いしれて目を閉じた。
匂いが…少し…変わった。
莉子が目をゆっくり開けると、昭人が入口に寄りかかって立っている。
その視線は…。
まさに、獲物を見つけた狩人のように鋭い。
良いよ。
私は、貴方のライフルスコープに捕らわれた、駒鳥で。
男は、どんなに着飾っても雄である。
女も、演技なしに、その快感に溺れる時を知る。
それは、テクニックでも何でもなく、感情のなせる業なのだと、莉子は感じ取った。
男が求めてくる理想的な女の乱れ方は、身についた本能として魅せる事は出来る。
でも、そこでない、溺れ狂う刺激が、莉子を捉えて、束縛して、昭人を離したくない衝動へと変貌していくのだった。
言葉を交わすことなく、ベッドを揺らし…
いつの間にか、陽が暮れ、強い夜風が入ってくる。
でも、寒いとは感じない。
年齢を感じさせない、滑らかな肌と、程よい筋肉に包まれて、莉子は身体の奥底からの熱情に酔いしれていた。