NOVEL

マザーズカースト vol.8~思いがけない偶然~

今までは雄一郎に心配かけないようにとトラブルについては自分の心の中に留めていたが、明日の発表会を前に全てを打ち明けた。

「俺に気を遣わず相談してくれればよかったのに」

そう言って雄一郎は明日入っていた仕事を無理矢理キャンセルし、発表会と謝恩パーティーに同席してくれることになった。

 

-発表会当日-

 

発表会の会場は幼稚園児の子供達にはあまりに大きすぎるほど大きなステージで、眩しい照明が輝いていた。健太は緊張よりもワクワクが勝っているのか他の子供達と楽しそうに控え室で戯れあっていた。

一方でママ達はカメラの準備などバタついた様子で緊張が伝わってきた。

 

いよいよステージ本番。

健太は練習通りにセンターで伸び伸びとした踊りを披露し、私と雄一郎は2人揃って感動で涙が溢れた。

 

その後、謝恩パーティーの会場に向かうとすでに子供達と両親らが集まっていた。

そしてパーティーが始まると、保護者を代表して千奈美さんが直人先生に向けてお礼の挨拶と花束贈呈を行った。

 

 

「昨日浮気を匂わすメッセージを流したのはさっき挨拶していた人なの」

私が雄一郎に伝えていたその時、会場に1人の男性が現れた。

 

男性は千奈美さんの元へ。

「遅くなってごめんな」

と言いながら駆け寄り、周りのママ達に挨拶をする。

「うちの年下旦那の康二です」

と千奈美さんが紹介する姿を見て、雄一郎はなぜか驚いた表情をした。

 

「雄一郎どうしたの?まさか知り合い?」

と聞くと

「知り合いも何も・・・ あいつは俺の直属の部下だよ」

とまさかの返事が返ってきたのだ。

向こうも雄一郎に気づくと

「斉藤さん・・・?」

と驚いた様子で話しかけてきた。

そんな旦那の様子に一番気まずそうにしているのは千奈美さんだった。