NOVEL

マザーズカースト vol.2~すべての始まり~

-初めてのママ友会ランチ-

 

約束の時間になりエントランスに集まると、朝のママさん達が揃っていた。

様々なブランドの小さいバックを持つ集団は程よく皆が着飾られていて華やかである。

 

どうやらママ友会行きつけのお店があるらしく、集団はマンションから駅に向かって少し歩いた先にある一軒のイタリアンレストランへ入っていった。

買い物に行く時に美味しそうだと気になっていたお店だった。

 

reserveの札が置かれたテラス席に案内され、注文を済ませるとグラスがテーブルに並び、シャンパンが注がれる。

 

 

「今日は結衣さんの歓迎会ってことで、たまにはお昼から一杯くらいいいじゃない!」

千奈美さんはそう言うと、泡の輝くグラスを片手に乾杯をした。

ママさん達もみんな温かく迎え入れてくれて私はとても嬉しく興奮した瞬間だった。

 

近所の子供連れスポットの話や子育て話が始まるとママさん達の会話はどんどん盛り上がる。

会話の内容は子供のお稽古事が話題となった。

 

「健太も4歳になったので、そろそろ何かお稽古事に通わせようと思ってるんです」

私がそう相談すると

「今日来ているみんな、金曜日の夕方から同じヒップホップダンスのスタジオに通わせてるわよ」

「小さいうちから音楽やリズムダンスに触れておくことは大切よ」

「健太くんもよければ一緒に始めてみない?」

皆が口を揃えて誘ってくれた。

 

聞くところによるとそのスタジオは有名なコレオグラファーが子供向けに開いているダンススタジオだそう。

小さいうちからイベントや発表会などしっかりとステージに立たせることで、表現力のある子供を育てていくポリシーらしい。

少し緊張しやすい健太のためになればと、まずは体験レッスンに参加することを決めた。

 

「それじゃあ今度の金曜日ね。健太くんが楽しんでくれるといいわね」

そんな会話をしながら、そろそろスクールバスの時間ということで私たちは会計を済ませて店を後にした。

 

店を出たちょうどその時、道路を挟んで反対側の歩道を歩く真理子さんが見えた。

向こうもこちらに気づいて一瞬会釈をしたが、他のママさん達が店から出てくるのを見ると少し足早に裏路地の方に向かって歩いていってしまった。

 

(同じ幼稚園のはずなのに、他のママさん達と知り合いじゃないのかなぁ)

 

真理子さんの少し曇った表情を見て、なんとなく私はそう思った。

けれど大人数で集まるのが少し苦手な人もいるはずだ。

真理子さんもきっとそういうタイプなのだろう。

この時はそう思い、あまり深く考えずにいた。