「もしもし」
「もしもし、急にごめん。話したいことがあって、明日会えない?」
斗真と話すのは、新しい彼女と一緒にいるのを見て以来。それから連絡を取ることも、斗真の姿を見ることもなかった。久しぶりに聞く斗真の声は、付き合っていた頃のように優しく、胸がときめいた。
「いいよ、ちょうど空いてたから」
私と斗真は明日、カフェで会うことになった。要件は「会ったときに話す」の一点張り。今さら何の用なのか、正直気になって仕方がなかったが、明日まで待つしかない。
私は明日、斗真と会えることを楽しみに眠りについた。
次の日、私はとびっきりのおしゃれをして斗真に会いに行った。まるで恋人とデートに行くときのような服装。斗真に会えるというだけで、私の心は浮かれていた。
待ち合わせたカフェに行くと、斗真はすでに席に着いていた。相変わらずおしゃれな服と綺麗にセットされた髪。付き合っていた頃の気持ちが思い出される。私を見た斗真は、自然と笑みがこぼれた。
「お待たせ」
「俺も今来たところ、とりあえず座ったら?」
斗真に促され、正面に腰掛ける。注文を済ませると、斗真は先ほどの笑顔を崩して真剣な表情を見せた。そして、私に向かって深々と頭を下げた。
「あのときは、本当にごめん。悪いのは全部俺だったのに」
斗真は頭を下げて、浮気をしたことを謝ってきた。正直、もう時効だと思っていた私。斗真が謝るなんて、思ってもいなかった。
「街で会ったときも酷いこと言って、本当に俺最低だった」
こんなに謝っている姿を見たことがないというくらい、頭を下げる斗真。あのときは怒りと悔しさで「絶対に許せない」と思っていた私だが、今の斗真を見ていると怒りなんて吹き飛んでいってしまった。
「私も、付き合っていたとき斗真に優しくできなかったから。ごめんね」
何度も謝罪する斗真を見ていると、自分にも罪悪感が芽生えた。罪悪感に耐えられず頭を下げると「顔を上げて」と斗真が言う。そして「今日は謝りたかったのもあるけど、直接報告したいことがあって」と続けた。