NOVEL

婚活物語―ハイスペ男と結婚したい―vol.6~「私、結婚に妥協はしたくないので」~

 

結婚相談所に登録してから1ヶ月ほどが経ち、23日に1人のペースでお相手男性の情報が送られてきた。だけど、私の希望する男性は1人もいなかった。

 

阿部さんからの連絡には、毎回「希望の条件全てに当てはまる男性がいないため、こちらの男性で検討していただいてもよろしいでしょうか」と書かれていた。

 

年収は高くても年齢が10個も離れていたり、身長や年齢は完璧なのに年収が1,000万円程度だったり、普通の人であれば「それくらい大丈夫」と思えるような相手でも私はOKができなかった。

 

全ての条件に当てはまっている男性でないと、意味がない。だから私は阿部さんから紹介された男性を全員断っていた。

 

だけどあまりにも断り続けると、印象が悪くなって紹介される男性が少なくなることを危惧した私は、3人に1人くらいのペースで顔合わせだけはするようになった。

 

男性側から断られることはなかったので、全て私の返答次第。でも、顔合わせ後に交際の意思を確認されたときには結局全員断っていた。1ヶ月で10人ほど紹介してもらったのに、交際に至った数はゼロ。「良いな」と思う男性すら見つからなかった。

 

交際の意思を見せない私に対して、阿部さんは悩んだ様子を見せた。何度か「条件を下げませんか?」と相談を受けたが、私は決して首を縦に振らない。

 

 

「これより下の人と結婚するくらいなら、独身の方がマシです」

 

半分冗談で言ったつもりだったが、1ヶ月間接していくうちに私のプライドの高さが阿部さんもわかってきたのだろう。私の言葉を本気に思って「少しでも条件に近い相手を見つけますから」と言う。

 

結婚相談所は成婚が成立したときに、成婚料という名目でお金を取る。入会費や会費と比べると高額なので、売上のほとんどが成婚料で成り立っているのだろう。だから、私にも早く結婚して欲しかったに違いない。対応が難しければなお更だ。

 

早く結婚したい私と早く結婚させたい阿部さん。お互いが求めているのは同じはずなのに、目標からは遠ざかっている気がした。

 

 

「松村様に、お会いしてほしい方がいるんです」

 

結局2ヶ月目以降も、私には結婚したいと思えるような相手が見つからなかった。もしかしたら、このまま相手すら見つからないのではないかと私でも不安に感じてしまう。そんなとき、阿部さんから連絡があり、何十人目となる相手を紹介してもらうことになった。

 

「相手は医者の方です」

 

医者という響きだけで、私の中では好印象。しかし、いつものごとく「ただ…」と言葉を挟む阿部さん。

 

「松村様は30歳までが希望とのことでしたが、こちらの男性は31歳なんです。しかし、その他の条件はクリアしております」

 

ネックなのは、年齢だけ。しかも、たかが1歳。それくらいなら、誤差の範囲ではないかと自分に言い聞かせる。出身大学は愛知県内でも有数の難関大学。しかも、医学部卒だ。現在は脳神経外科を担当しているそうだが、調べてみると医者の中でも年収が高いことがわかる。

 

1回、会ってみます」

 

私は結婚相談所に登録して初めて「会う」という決断を即答で行った。私の即答に阿部さんも驚いた様子だ。私の気が変わらないうちにと日程はすぐさま決められ、来週の土曜日に近所のカフェで会うことになった。

 

気合を入れて、普段なら買わないブランドもののワンピースを買う。女の子らしい白い花柄のワンピースをチョイス。低めのヒールのパンプスを履いて、待ち合わせ場所に向かった。