NOVEL

婚活物語-ハイスペ男と結婚したい―vol.2〜突然の別れ。信じていた彼の裏切り〜

「落ち着いたら俺の方から連絡するわ」

斗真からのメッセージ。「わかった」とだけ返した私だったけど、今思えば「お前からは連絡してくるな」という意味だったのかもしれない。

 

斗真と別れた私は、斗真と出会う前のような生活に戻ってしまった。

 

斗真と別れたことは、いつの間にか社内へと知れ渡っていた。きっと斗真が働いている会社からの噂で広がったのだろう。

 

「あんなにお似合いだったのに!」

「俺が松村さん狙っちゃおうかな」

「高橋さんと別れるなんてもったいない」

 

私には多くの人から声がかけられた。同性からは憐れみの言葉、異性からは私を誘うような言葉。自分も斗真もモテていることが実感できたし、私に相応しいのは斗真しかいないと思えた。

 

「仕事が落ち着いたら迎えにくるって言われたから」

 

私がそう返すと、男性も女性もどこかがっかりしたような顔をした。男性陣は私を、女性陣は斗真を狙っていたのだろう。その顔を見ると優越感に浸れて幸せだった。

 

私の気持ちが斗真にあることは、誰の目にも明らかだったと思う。それでも、他の男性からアプローチされることは多かった。ご飯やデートに誘われることも多かったし、数合わせで参加した合コンでも告白されることばかりだった。

 

そしてアプローチしてきた男性の中でもスペックが高い人は、デートに付き合ったり、一晩だけ一緒に過ごすこともあった。それで「付き合える」と思われたこともあったが、私は決して付き合うことはなかった。私の中では全員が遊び相手。寂しさを埋めるための道具でしかなかった。

 

私が遊んでいるという噂はすぐに広まり、周りの女性からは「高橋さんがいるのに…」と陰口を言われることもあったが、そんなの気にしない。だって今の私は、誰のものでもないから。

一度、同僚が好きだった会社の先輩に言い寄られたことがあった。同僚が先輩を好きなことは知っていたけど、先輩は社内でも期待されているエース。恋愛感情は一切なかったけど、仕事終わりにご飯へ行き、そのままホテルに行ったことがあった。

 

それをどこから仕入れた情報なのか知らないが同僚にバレてしまい、「私が好きなの知ってるくせに最低」や「先輩のこと盗らないで」などと直接言われた。きっと普通の人であれば傷ついたかもしれないが、私のメンタルはそんなに弱くない。