莉奈が斗真に結婚について問いただしてから斗真は莉奈を避けるようになる。
彼女の心に不安が募る中、深夜に斗真から一本の電話が入る。
前回:婚活物語―ハイスペ男と結婚したい―vol.1~彼との出会い~
斗真に結婚について言及してから、だんだんと二人で会う機会が少なくなった。私がデートの誘いをしても「仕事が忙しい」と返ってくるばかり。私の心には不安が募った。
会社で斗真の顔を見ても、会釈する程度。付き合ったばかりの頃は、いつも話しかけてくれていたのに。そんな小さな変化すら、私にとっては不安の種でしかなかった。
だけど、斗真は営業部のエース。会社の中でも期待されている存在だということは、私から見てもわかりきっていた。
きっとこれから出世するんだ。玉の輿に乗るためには我慢しなきゃ。
そんな思いで、私は斗真が仕事を優先することに対して何も言わなかった。この我慢も、あと2年ほど。斗真が30歳になるまでに、きっとプロポーズしてくれる。私は信じていた。
だけどあるとき、急に斗真から電話がかかってきた。時刻は23時39分。こんな夜遅くに斗真から電話があるなんて初めてのことだったから、私は驚いた。
「もしもし?」
電話に出ると、電話の向こう側から「もしもし、莉奈…?」と何だか気まずそうな斗真の声が聞こえる。「うん、どうしたの?」と私が問いかけると、斗真の口から予想外の言葉が出てきた。
「俺たち、別れよう」
一瞬、時が止まったようだった。何で?どうして?私の何がいけなかった?頭の中でグルグルと回り続けるハテナマーク。私が何も返せずにいると、斗真は話し続けた。
「最近仕事が忙しくなってきてさ、莉奈には寂しい思いばかりさせてるし、このままそんな思いさせたくない。仕事が落ち着いたらちゃんと迎えに行くから、一旦別れてほしい」
あくまでも一時的な別れ。斗真は言ってくれた。「迎えに行く」と。斗真の私への気遣い。その優しさに、私はキュンとした。
声のトーンからも、勇気を振り絞って伝えてくれたことがわかった。だから私には、斗真からの別れを断る理由などなかった。
「わかった、斗真のこと待ってるからね」
そう言って私は電話を切った。電話をしたのは、わずか1分程度。正直、斗真と別れた実感なんて湧かなかった。携帯を握りしめたままぼーっとしていると、LINEの通知音で我に返る。