「改めて言わせてください。僕、莉奈さんと結婚したいです」
「こんな私ですが、よろしくお願いします」
「お父さん、早く」
「パパ、入学式に遅れちゃうよ」
あれから6年以上の月日が流れた。私と和哉さんは結婚し、1人の女の子に恵まれた。名前は夢花。今日は、夢花の小学校の入学式だ。
真新しいランドセルを背負い、和哉さんを呼ぶ夢花。今は家族3人で幸せな生活を送っている。
「弘也くんも同じ小学校なんだっけ」
「そう、夢花と同じクラスだといいね」
弘也くんは、斗真と悠里さんの子供。あれ以来、斗真と連絡は取っていなかったが、子供の幼稚園が一緒だったことで再会。和哉さんと斗真の相性は良かったようで、いつの間にか家族ぐるみの付き合いになっていた。
もう斗真に対して未練は全くない。付き合っていた頃の記憶は良い思い出として心に残っている。斗真とは2人で会うこともなく、むしろ悠里さんと一緒にいる時間の方が増えた。
家庭的で清楚で私とは真逆の悠里さん。話しが合うはずないと最初は思っていたけれど、話してみると、気さくで優しくて一緒にいて楽しい人だということがわかった。今では斗真と悠里さんを目撃した修羅場を笑い話にできるほど、距離は縮まっている。
「あ、弘也くんたちいるよ」
小学校に到着すると、校門の前で写真を撮っている家族が目に入る。弘也くんを真ん中に、斗真と悠里さんが並んで微笑みながらピースをしていた。
「弘也、夢花ちゃん来たぞ」
車から降りて、真っ直ぐに向かっていると斗真が私たちを指差して弘也くんに声をかける。幼稚園で何度も見ていた弘也くんだが、ランドセルを背にちょっと大きめの制服を着ている姿を見ると、なぜだか少しだけ大人っぽく見える。
「弘也くんと2人で写真撮ろうよ」
弘也くんの姿を見て提案する和哉さん。その提案に斗真も悠里さんも頷く。
「はい、チーズ」
校門の前で仲良く手を握り、笑顔を見せる夢花と弘也くん。これから成長するにつれて、2人の関係性は変わるのだろうか。
カメラ越しに2人の姿を眺めながら、これまでの記憶を思い返す。
ずっとハイスペ男と結婚したいと思っていた。格好良くて、頭が良くて、お金持ちで…。周りから羨ましがられるような人と結婚するのがずっと夢だった。
そんな思いでターゲットにしたのが斗真。だけど、斗真が選んだのは私とは正反対の悠里さん。そして、私が選んだのも、斗真とは全然違う和哉さん。もし、私と斗真が結婚していたら、今もこんなに笑顔でいられただろうか。
結婚相手を選ぶ基準は人それぞれ。だけど、運命の相手が自分の判断基準に当てはまっているかどうかなんてわからない。結局大事なのは、将来が幸せであるかどうか。第一印象はイマイチだった和哉さんだけど、今、私が幸せでいられるのは和哉さんと結婚したから。この判断は間違っていなかったと思う。
これから先の10年後、20年後、30年後…。私は、和哉さんとなら幸せな人生を歩んでいけると思う。これからも家族で、幸せな日々を過ごしていけますように。
―The End-