和哉さんから受けたプロポーズを保留にしてから1週間が過ぎた。
この1週間、私はプロポーズされたことを家族や友人に相談した。
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「断る理由なんてないんじゃない⁉」
私は和哉さんと結婚すると周りから思われていたようで、保留にしたと聞いた人は皆驚いていた。正直、自分でも驚いている。
プロポーズを受けた日の帰り道は、気まずさしかなかった。2人の間を流れる沈黙。普段だったら話を振ってくれる和哉さんも、この日ばかりは何も話しかけてこなかった。表情には出ていなかったけど、相当落ち込ませていたかもしれない。
あれから、私は和哉さんと連絡を取っていない。和哉さんからも連絡が来なかったし、私の方から何を連絡したら良いのかもわからなかった。それに、次に会うのはきっと、プロポーズの返事をするとき。私の心はプロポーズを受けるか否か決まっていなかった。
「結局どうするの、結婚するの?」
プロポーズの返事を保留にしていることを母に伝えると、すぐさま電話がかかってきて長々と話される。和哉さんと付き合っていることは伝えていたが、結婚の意思については伝えていなかった。
姉が結婚したこともあり、続けて私が結婚するとなると母は嬉しくて仕方ないのだろう。電話越しに母のワクワクした様子が伝わる。「結婚する」なんて一言も言っていないのに母の頭の中の私は、プロポーズを承諾しているようだ。
「悩んでる」
「何を悩む必要があるの?優しくて真面目でお金もあるんでしょう?」
母の意見はもっともだ。きっと、和哉さんほど結婚相手として素晴らしい人はいない。そんなの、頭でわかってる。なのに、なぜか一歩を踏み出すことができないのだ。
「前付き合っていた人が忘れられないとかくだらない理由なら、結婚してしまいなさい。将来の方が大事よ」
まるで私の考えを見透かしたかのように、母から告げられた言葉。「斗真のことが忘れられない」なんて誰にも言っていないのに、母にはお見通しだったようだ。
「…なるべく早く、答えは出す」
私が和哉さんのプロポーズを素直に受け入れられなかった理由を当てられ、何も言い返せなかった。逃げるようにして母からの電話を切った私は、和哉さんとのトーク画面を開いた。
1週間前の日付で止まったままのトーク履歴。ふと和哉さんとのトーク履歴を見返すと、メッセージから優しさが滲み出ていることに気付く。