小さなころからチヤホヤされてクラスのマドンナ的存在だった莉奈。
そんな彼女が幼いころから抱く夢とは?
「莉奈ちゃんってお人形さんみたいだよね」
小さな頃からチヤホヤされ続けてきた。クリッとした大きな瞳に白い肌。まさにクラスのマドンナだった。
そんな私の夢は玉の輿。
私の家は一般的な家庭で、それなりの生活はしてきたが、特別贅沢な生活はしてこなかった。ブランドものの洋服やアクセサリーが欲しかったし、海外旅行にも行きたかった。
だから私は、自分の夢を全て叶えてくれるような男性と結婚したいと思うようになった。昔から男性を判断する基準は「私のステータスが上がるかどうか」。
どんなにイケメンで人気者だったとしても、お金がなかったら意味がない。デート代は全て出してくれて、誕生日には高価なプレゼントを渡してくれる。さらには一緒に歩いていて羨ましがられるようなルックスの持ち主じゃないと論外。
初めて彼氏ができた高校生の頃から、私の基準は変わっていなかった。今思えば、ちゃんと好きになって付き合った相手などいなかったかもしれない。私の中で「彼氏」は「アクセサリー」と同じ。
学生時代の恋人とは結婚したいと思っていなかったし、私にとって将来の結婚相手に向けた恋愛の練習相手。恋愛に慣れていない女だと、男に舐められると思ったから。お金も時間もかけてもらえるような女になるべく、私は自分磨きに勤しんだ。
月日は流れ大学を卒業した私は、大手企業に入社した。私が就活をするときも基準は玉の輿。大手企業に入社したら、ハイスペックな男性と出会えると思ったから。無事、第一志望だった企業に内定をもらったときは心の底からガッツポーズをした。
そして、入社して1カ月ほどの短期間で、私は運命の出会いを果たす。
「高橋斗真です」
一目惚れだった。会社の先輩に誘われて参加したお得意先の方々との合コン。
「良い人がいれば」くらいの軽い気持ちで参加した合コンだったが、私は一人の男性に一目惚れをした。顔も声も話し方も全てがストライク。
一方彼は、私のことなんて眼中になかった。
どんなに私が視線を送っても、決して合わない目線。彼が私を見ていないことは、最初からわかっていた。
だけど諦めることなんてできなくて、私は半分無理やり、彼の連絡先を聞き出した。最初は渋っていた彼だったけど、私がしつこかったからか最終的には「LINEだけ」という約束で連絡先を交換した。
連絡先を手に入れればこっちのもの。私は何度断れてもデートに誘って距離を縮めようとした。最初は断っていた彼だが、私の気持ちが本気だということに気づいたのか、デートに応じてくれるようになる。
最初は恋愛感情を伝えず、仲の良い女友達を演じた。彼の体に触れることも「帰りたくない」などわがままを言うこともなかった。本当は今すぐにでも抱きしめて欲しかったけど、そんなことをしたら私は軽い女と思われてしまう。それだけは嫌だった。
そして、3回目のデート。その日は二人で水族館に行った。薄暗い空間と程よい人混み。「逸れちゃったらダメだから」と彼の伸びた手が私の手を握る。こうなれば、もう私のもの。
「私のこと、どう思ってるの?」