座談会に参加することになった父・裕司であったが、これがきっかけで裕司にとって初めての経験をすることに!?
無事、妻と息子と和解することが出来るのか・・・。
裕司は、関心なく周りを眺めていた。地下鉄伏見駅から徒歩3分のビルである。この会合は、どうやらDV加害者の集まりらしい。配偶者に離婚や別居を突き付けられたような人間が多く集まっているとのことだ。
裕司は全く自覚が無かった。自分は、一方的に勘違いをした妻から別居を言い渡されただけ。寧ろ被害者である。なおかつ、DVやモラハラをはたらいたとの意識も当然無かった。
面談だと言われて話を聞かれたりもしたが、裕司は酷く不満だった。
「あのですね、私は言われたから来ただけであって、本当はこんなところに来る覚え全くないんですよ」
裕司は顔をしかめて、やる気の無さをにじませながら言ったものだった。
「加害者と言うのなら妻の方じゃないですか。私を一方的に悪者扱いして、息子を勝手に連れて行って離婚を突き付けるだなんて。ある日帰ったら突然、妻も子もいなくなってたんですよ。それで不自由な生活を強いられて、本当にひどいもんです」
だらだらと語っていると、うんうんと聞いていた、ここの係の人間だと言う女性が、分かりましたと話を切り上げた。
「天城さんにも、皆さんとお話をしてもらえたら嬉しいです。それで、何か気付くこともあるかもしれないですし」
「はあ……」
パンフレットも渡されたのでぺらぺらと捲るが、書いてあることを読んでも全く参考にはならない。
『パートナーに身体的暴力をふるう、怒鳴る、仕事を辞めさせたりする……』