妻・加奈恵と息子・春樹が家を出て行ってから反省するばかりか腹を立てている夫・裕司。
そんな裕司は変わることができるのか・・・?
裕司は、腹を立てていた。
あの後、弁護士を名乗る女性から電話があったのだ。聞くと、加奈恵は何と離婚を申し出ているという。
(信じられるか!)
夕食の準備は無く、前から計画していたということなのか、冷蔵庫の中にもおかずの残りなどは全く無かった。腹を空かせた裕司は、仕方なくカップ麺を探し出してお湯を入れる。
……加奈恵がいなければカップ麺の在り処も分からないのだということに、本人は気付いていなかったが。
食べて空腹が紛れると、元気が出てきたのか余計に加奈恵に対して腹を立てた。
おそらくさっきの電話の様子からして、義両親は加奈恵の居場所を知っているのだろう。直接義実家に身を寄せているのかもしれない。
(乗り込んでやろうか)
そう思ったが、明日も平日のため、仕事を優先させなければならないと思った。そう、俺はこんなくだらないことに時間を使っている場合じゃないのだ。
風呂の用意もしていなかったため、シャワーを浴びる。本来なら加奈恵も一緒のはずの寝室に戻る。一人で布団を被って寝た。腹も立てすぎると疲れることに気付いた。
***
「なんか天城さん、いつもより更に怒りっぽくなってね……?」
「機嫌もすごく悪そうだし……」
裕司が勤めている会社で、社員たちがこそこそと話す通り、翌日からの裕司の機嫌は最悪だった。
なんせ、毎日コンビニでご飯を買わなくてはならず、家に帰ったら室内は自分が前日までに散らかした通りで放ったらかしである。風呂は洗っておらず、湯船にお湯を溜める余裕もないので毎晩シャワーで済ませていた。
一番腹が立ったのは、シャツにアイロンが掛かっていないことだった。アイロンが仕舞ってある場所など分かるはずもなく、当然自分で掛ける考えなど全く無かった。だから毎日クリーニングに持っていく羽目になった。
それもこれも、全てが加奈恵のせいである。
(加奈恵が変な気を起こしさえしなければ……)