『もしもし』
「もしもし、裕司です。お義父さん、加奈恵を知りませんか! あいつ……」
そこで裕司は口をつぐんだ。一応体裁がある。「……勝手に出歩いているみたいで、困っているんです。そちらに行ってはいませんか」
少しの間の沈黙があった。次の義父の声は、厳格で冷たいものだった。
『悪いが裕司君、君に加奈恵の居場所は教えられん。もううちの子や孫を苦しめないでくれ。話はそれだけだ。もうかけてこないでくれないか』
「お義父さ……」
そこで、電話は切られた。
裕司は呆然と、スマホを握り締めたまま立ち尽くしていた……。
***
加奈恵は、裕司から電話がかかってきたという連絡を聞いて、暗い気分になった。
しかし、これで反省する裕司かと言えば、決してそんなことはなかった。彼の勘違いはまだ続くのだった……。
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妻・加奈恵と息子・春樹が家を出て行ってから反省するばかりか腹を立てている夫・裕司。そんな裕司は変わることができるのか・・・?