NOVEL

女の顔に化粧をするとvol.4 ~衝撃~

3カ月間準備してきた企画が頓挫し動揺するも落ち着きを取り戻しつつある商品企画部1課の課長・真鍋加奈恵はある日の帰り道、同棲相手が女と一緒にいるところを目撃してしまう。

その女の正体とは!

 


前回▶女の顔に化粧をするとvol.3 ~万難を排して~

はじめから読む▶女の顔に化粧をするとvol.1 ~思いがけない知らせ~

 

 

「ま、真鍋課長!お菓子食べませんかっ?」

 

「いえ、大丈夫よ」

 

島田が差し出してくれたチョコレート菓子を受け取らずに、パソコンの画面に視線を戻す。3カ月。3カ月の間ずっと準備をしてきた。今月計上するはずの売り上げだけでなく、タイアップ予定であった期間の売り上げ全てが白紙に戻る。予想していた売り上げを担保できるような当ては、他にはない。だが、焦りも動揺も一周回ると落ち着いてくる。

 

ここまでの準備期間は、向こう側もしっかりと時間を使ってきたはずだ。このタイミングで全てを白紙に戻すことは、先方にとっても利益はないはずだ。何か不自然な流れを感じる。

 

「考えても仕方ないか

 

頭の中がごちゃごちゃしている。しかし、そちらばかりに集中しているわけにもいかない。

 

「島田さん、今度の企画の資料はできた?」

 

「あ、いえ、まだです」

 

「会議は来週でしょ?明日までには第一稿を出してね」

 

「カリカリしすぎじゃないですか、真鍋課長」

 

山下が相変わらずの無表情で近づいてくる。ショートヘアにスーツを着込む山下の佇まいは、常に凛としており、今の私の状況とはあまりにも対照的だ。余裕のなくなる自分と、私のことまで気にかける余裕がある山下。見せつけられているような気分になる。

 

「山下さんには関係ないことですよ」

「あなた、それだと、いつか誰も助けてくれなくなるわよ」

「・・・関係ないことです」

 

同じ女性課長としてのプライドも私の邪魔をしている。

 

 

「ただいま」

 

今日は、というより今週は疲れた。いつもは買わない缶チューハイを今日はコンビニで買ってしまった。明日も出勤日なのであまり深くは飲めないが、一度リセットをしておきたかった。コンビニの袋を人差し指と中指にかけながら、パンプスを片足ずつ脱ぐ。足先がかなり凝り固まっているのが、触らずともわかった。