NOVEL

女の顔に化粧をするとvol.2 ~暗礁~

3カ月間ずっと温めてきたアニメーション企業とのタイアップ企画が一本の電話で頓挫し、イライラが募る加奈恵。

そんな彼女がとった行動とは?

 


前回▶女の顔に化粧をするとvol.1 ~思いがけない知らせ~

 

「では、ミーティングを始めます」

1730分。朝礼をかねたミーティングが始まった。

「報告はいろいろあるが、まずは昨日報告を受けた件について聞きたい。真鍋課長」

「・・・はい」

 

 昨日、ありえないことが起きた。3か月間ずっと温めてきたアニメーションとのタイアップ企画が一本の電話で頓挫したのだ。まだ契約書は交わしておらず、法的な拘束力はない。しかし、細かい部分のすり合わせや、弊社商品とコラボをすることの利益は、納得の上で前向きに進んでいたはずだ。それに、公的な場以外でも、尽くしてきた。

 

「状況は、報告の通りです、昨日先方の米田様より入電を頂き、タイアップ企画を保留にしたい旨を伺いました」

「それで」

それでも何もない。この件で頭が回っていないのは私のほうだ。この3か月の努力を5分の電話で無にされたのだ。

「来週、先方にお話を伺うお日にちをいただきました。その際に、先方のご判断の経緯と再度、提案を進めていきたいと思っています」

 

「どういうつもりですか、米田さん」

「すまないね、真鍋さん」

 

その日の夜、会食を予定していた相手は米田だった。私は、あまりに急な状況にいら立ちを感じつつ、米田に詰め寄った。

「説明してください。この企画に、どれだけ力をいれ、会社から期待されていたのかわ分からないわけではないはずよ」

 

米田は生ビール、私はウォッカベースのマティーニをそれぞれ頼む。私が好きな映画の主人公が、好んで飲むカクテルだ。これを飲んで臨む会食には、気合が入る。

「私もそこはわかっているさ。しかし、私は作品の広報を任されている身ではあるが、全体の指揮をとるプロデューサーではない。そこも君はわかっているだろう?」

「それは、知ってます。」

「そして、プロデューサーがそうといえば、そこが最終判断になることも」