雅さんから連絡があった。
またどこかのタイミングで会いたい、とのことだった。真鍋さんとは別れたようだ。
私にとっては、良かったような気もするし、良くなかったような気もする。真鍋さんと雅さんを引き離すために、私がいろいろと働きかけたのだ。
はじめから読む▶女の顔に化粧をするとvol.1 ~思いがけない知らせ~
「責任」という言葉を私が使ってもいいのかわからないが、責任は取らなければいけない。
真鍋さんは、私がそういう女であるとわかっていながらも、真摯に向き合ってくれた。その姿勢は、私が取った行動全てを見ていると示されているようで、気圧(けお)されてしまいそうだ。しかし、私も向き合わなければいけないのだ。
「真鍋課長、こちらの資料どうでしょうか・・・?」
「お疲れ様。見ておくから、こっちに置いておいて。ありがとう」
真鍋課長は、私たちメンバーが行った仕事に対して、必ず一言を添えてくれるようになった。そのおかげで、課の雰囲気はとてもよくなっている。他のメンバーも、真鍋課長に相談している姿を見かけることが多くなった。
今までは、私の全てを奪った人としてただただ憎いだけの対象だったが、今となっては尊敬すらしている。
私は、ただ自分のエゴを彼女にぶつけて叫んだだけだった。それを彼女は、大きな仕事が白紙になって、ぼろぼろの精神状態の中で、更に私に向き合おうとしてくれたのだ。
これからは私が、まっすぐに向き合わないといけない。そうでなければ、あそこまで真鍋課長を傷つけた私を、私自身で認められなくなってしまう。
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一人一人が次に向かい始めた。私も、島田も、雅も、今まで停滞していた時間が少しずつ動き始めた。
とはいえ、昨日と今日で過ごす日々が変わるわけではない。これからも変わらない日常の中にある、微かな変化にいちいち心を揺らしながらただ生きていくのだろう。
たまにお酒をいれながら、落ち込んだり、喜んだりを繰り返して進んでいくしかないのだ。
先がどうなるのかわからない。その時々の自分や周りの人と向き合って、少しずつ…。
でも、きっと、周りを思いやることを忘れなければ、いつでも誰かが助けてくれるだろう。だから、きっと、これからも私たちは安心して歩を進めていけばよいのだろう。
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「真鍋さんって、そんな顔するのね」
真鍋さんのあんな顔は初めて見た。いつも淡々と仕事を済ませ、凛としている真鍋さん。どんな状況でも月の売り上げの目標をクリアし、次につなげる武器も準備する。部下のミスも、多角的な目線をもって解決に導く。その手腕は真鍋さんの同期の島田とは、一線を画していた。