NOVEL

【女の顔に化粧をすると】vol.1~思いがけない知らせ~

「それで、今月はどうするの?先月の新商品は内容を見直すとして、今月の施作は?」

「今月は、先月の商品企画のブラッシュアップをしつつ、5月から3カ月進めてきた、アニメーション番組とのタイアップ施作の契約書をまき、本格的にローンチさせます。」

「プロモーションの効果は望める?」

「はい。該当の番組の視聴率が・・・」

 

 

「課長、こちらの資料終わりました。」

「置いといて。」

「昨日の商談のフィードバックですが・・・。」

「商品知識は間違ってなかったけど、薄いですね。商品の目的ではなく、根本の部分を理解して。」

朝11時。各種対応とスケジュール調整。今日は夜に会食がある。遅れるわけにはいかない。

 

名駅前、大名古屋ビルヂングをはじめ名だたるビル街の中に、弊社は在る。

起業当初は、もっとこぢんまりとしたビルだったらしいが、今はガラス張りのビルのワンフロアを丸々一つ借り切って業務を回している。業務を回すのに場所は関係ないと思うが、会社の利益を皆に還元したいとのことだ。

 

「本当に大丈夫なの、真鍋課長?」

 ミーティングが終わるなり、2課の山下課長が話しかけてきた。

「何がですか、山下課長。」

「今月の施作の件。タイアップ先のアニメーション作品、他に競合がうようよ居るでしょ。」

「大丈夫です。」

「本当に?先月の施作もかなり無理を・・・」

「大丈夫です。」

「・・・そう。」

 

できないはありえない。もうかなりの手は打った。

ほぼ確実に、うちのプライオリティは上位にあると言える。先方担当者に加え、その上席とも酒の席を設けた。費用は自腹を切っているから、会社にはバレることはない。昇進と、それによる利益を考えれば、先行での投資は辞さない。あとは、課のメンバーの達成率を落とさないように立ちまわれば問題はない。

 

「あなた・・・。」

「何ですか、山下課長。」

「・・・なんでもないです。」