祖父が立ち上げた大手自動車メーカー「万丈モーターズ」の、社長をしている父にとって私の縁談は大切な「一生ものの商談」なんだ。
一度も会ったことがない男性に、私は一生を捧げるのか?まるで母のように。
お前は”幸せ”の定義を知らないと、何度も言われてきた。
幸せになるように育ててきた、とか、お前が幸せになるのが親孝行なのだ、とか。
私がそれを”幸せ”だと思えないのに、幸せに見えるように生きろと言うの?
とにかく。
父の止まらない言葉の羅列に、私は、遂に
キレた。
信号は赤い。車が停車した隙に私はロックを解除するとバックを持ち外へ飛び出した。
「戻れ!茉莉花!」
開け放たれた扉、父の声を振り返ることなく私は走った。
下ろしたてのルブタンが履き慣れなくて踵が靴擦れを起こしてしまい、鋭い痛みを感じる。
信号が青に変わった。
周りから鳴らされるクラクションにどうやら諦めたのか、扉はそのまま締められ発車して行った。
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