見知らぬ男に酔った勢いで全てを吐露する紗夜。
そして不思議なバーオーナー・アオとお茶する聖奈、それぞれの人間関係がゆっくりと動き出す。
そして数ヶ月の選考後、遂にプロジェクトメンバーが選出された...。
前回:「Lady, Bloody Mary」~女の嫉妬~vol.7
高層ビルの高級バー。
紗夜は新たなカクテルを待つ間、名前も知らない男に今の自分の気持ちを吐露していた。
一度語り出すと止まらない、だが男は何も言わず、じっと耳を傾けてくれた。
「彼とその上司のキス、ショックだったの?」
まるで子供をあやすように、男は尋ねた。
「....分からない」
嘘だ。
紗夜は、目の前でライムが敷き詰められたモヒートをぼんやり眺めながら答える。
リノに、あのお局に、自分よりも明らかに仕事もできず会社のお荷物社員で評判のあの
女に、坂間の唇を悪戯(いたずら)に奪われていたのが、どうしてもプライドが許さなかったのだ。
どうして、あんな女?
紗夜は自分を「知っている」からこそ、非常に傷ついていた。
モヒートを飲み干すと、男に礼を告げ勘定をするため立ち上がると視界がゆらめく。
スマートな手が紗夜を支えた、左手には指輪はない。
「立てる?」
紗夜はぼーっとした頭で、酔っているな、自暴自棄だと感じた。
勘定を済ませる男をじっと見る
「どうしてご馳走してくれたの?初対面なのに」
「今の状態で、貴女がとても財布からお札を出せるように見えなかったから」
クスリと笑いながら、男が答えた。
「これから、どうする?」
その答え、紗夜は既に分かっていた。
寂しさは、寂しさで埋めるしかない。
ベージュのジェルネイルが男性の細い指にそっと絡む。紗夜より背が高い顔はあえて
見上げなかった。
「さあ...どこか連れてってよ、楽しいところ」
指が静かに絡んでいく。
「分かった、僕についてきて」
ふらつく紗夜と男が、閉まるエレベーターへ静かに消えていった。