もっとシャープにかわせば良いのに、頭からリノと坂間の姿がこびりついて離れない。
決して坂間を愛しているわけではないと思う。彼のキャリアや人柄は素晴らしい。
元カノと別れたばかりで傷心だと聞いていたから、一途で人を愛せる人なんだろう。
なのに、自分といったら...。
会社での鬱憤を、全て複数の男たちとの身体の寄り合いで癒し忘れようとした。
思えばずっとそうだった、目の前にいるこの爽やかな男にも、甘えようとしているのだろうか。
そう思うと、紗夜は
「モヒート」
と一言だけバーテンに告げた。
◆
同時刻、接待で栄のレストランから出てくる上司と聖奈たち。
得意先をタクシーに乗せ、笑顔でお見送りした後、聖奈は先に上司たちを駅まで見送った。
姿が見えなくなった時、ふうぅぅぅっと大きなため息をついた。
また栄か、もう早くタクシー捕まえて帰ろう、と思った矢先とんとんと肩を叩かれた。
しばらく無視していたが物凄い怒りの表情で振り向くと
「うわ、すげぇ顔」
と顔を見てゲラゲラ笑うアオの姿があった。
「えっ?前の...人?」
「そう、前、あんたを助けたバーの人だよ」
妙にバツが悪くなった聖奈は思わず目を背けた。先程の酒が一気に回って、くらっとする。
「おっと...大丈夫?」
「...お酒飲んだからだよ」
思わず聖奈が答える、妙に心にするりと入ってくるアオの声。
「そこに馴染みのサテンがあるからさ、コーヒーでも飲もうよ」
と路地裏の純喫茶を指さした。
少し迷ったが、前の借りもある。
聖奈は迷ったがうんとうなずき、アオに着いていった。
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見知らぬ男に酔った勢いで全てを吐露する紗夜。そして不思議なバーオーナーアオとお茶する聖奈、それぞれの人間関係がゆっくりと動き出す・・・