NOVEL

「Lady, Bloody Mary」~女の嫉妬~ vol.7

 

もっとシャープにかわせば良いのに、頭からリノと坂間の姿がこびりついて離れない。

決して坂間を愛しているわけではないと思う。彼のキャリアや人柄は素晴らしい。

元カノと別れたばかりで傷心だと聞いていたから、一途で人を愛せる人なんだろう。

 

なのに、自分といったら...。

会社での鬱憤を、全て複数の男たちとの身体の寄り合いで癒し忘れようとした。

思えばずっとそうだった、目の前にいるこの爽やかな男にも、甘えようとしているのだろうか。

 

そう思うと、紗夜は

「モヒート」

と一言だけバーテンに告げた。

 

 

 

同時刻、接待で栄のレストランから出てくる上司と聖奈たち。

得意先をタクシーに乗せ、笑顔でお見送りした後、聖奈は先に上司たちを駅まで見送った。

姿が見えなくなった時、ふうぅぅぅっと大きなため息をついた。

 

また栄か、もう早くタクシー捕まえて帰ろう、と思った矢先とんとんと肩を叩かれた。

しばらく無視していたが物凄い怒りの表情で振り向くと

「うわ、すげぇ顔」

と顔を見てゲラゲラ笑うアオの姿があった。

 

「えっ?前の...人?」

「そう、前、あんたを助けたバーの人だよ」

妙にバツが悪くなった聖奈は思わず目を背けた。先程の酒が一気に回って、くらっとする。

 

「おっと...大丈夫?」

「...お酒飲んだからだよ」

思わず聖奈が答える、妙に心にするりと入ってくるアオの声。

 

「そこに馴染みのサテンがあるからさ、コーヒーでも飲もうよ」

と路地裏の純喫茶を指さした。

 

少し迷ったが、前の借りもある。

聖奈は迷ったがうんとうなずき、アオに着いていった。

 

next:1月31日更新予定

見知らぬ男に酔った勢いで全てを吐露する紗夜。そして不思議なバーオーナーアオとお茶する聖奈、それぞれの人間関係がゆっくりと動き出す・・・