美雪さんに鈴木との昔のことをかいつまんで話した。美雪さんはときどき相槌をうち、時々オーバーにリアクションしながらも、最後まで聞いてくれた。
「それって、まだ女将さんのこと好きなんじゃないですか?普通に考えて」
その言葉も衝撃だった。考えないようにしていた、という方が表現としては妥当かもしれない。ただ、もしそうだとしても、私の彼への思いはもうかなり薄いと言っていい。そもそも恋愛を絡めるには内容が大きすぎる。
「そんなことはないと思うわよ。お互い、もういい大人なんだし」
「少しだけ、手伝ってあげても良いんじゃないですか?」
美雪さんが片手に雑巾を持ち直して掃除を始めながら言った。
「どちらにせよ、組合に恩も売れますし、私たちのお店の評判は上がるかもだし!」
確かに美雪さんの言う通りではあった。少し考えてみるわね、とだけ美雪さんには伝えて、私も仕事に戻った。彼がどう考えているのか今の私にはわからない。けれども、それを抜きにしても、組合が盛り上がることはこの長良川沿いのお店全体が活気づくことにもつながる。
「明日、連絡を取ってみるか」
彼の電話番号を、私の携帯はまだ覚えているだろうか。
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後日、鈴木と会うことになった私は、まず、鈴木の管理する組合の現状を確認することにした。
呆れてしまう現状ではあったが、私は意を固め返事をすることにした。