無理難題を佐智子に押し付け、すべての責任を彼女に負わせるつもりだった礼子。
だが佐智子は期日の金曜日になっても姿を現さなかった。
結局、礼子が責任を取ることになるのだろうか?礼子の運命は一体・・・!?
●準備万端
プルルルルル!プルルルルル!
10月2週目、金曜日の午後2時半。営業部第1課 山村礼子のデスクで内線のコールが響いた。
「・・はい、山村です」
覚悟を決めて礼子は受話器をあげた。総務部から指示されていた仕事の期限は今日の5時。佐智子にすべてを押し付けていたから進行状況すら分からない。
「あ、山村さん?石井だけど」
「・・石井部長、お疲れ様です」
「お疲れ様。それでこの前頼んだ・・」
「・・申し訳ありません!!」
石井の言葉を遮る様に礼子が電話口で頭を下げる。周囲はそれぞれの思惑を抱えながら様子を窺っている。
「・・え、・・はい。いえ、そんなはずは・・。はい」
うろたえた様子で礼子が相槌を打つ。やがて青ざめていた礼子の表情が徐々に落ち着きを取り戻していくのが見て取れた。
「・・はい、わかりました。確認してみます。はい、失礼します」
電話口で頭を下げると受話器を置いて礼子は息を吐いた。
「石井部長、何だって?」
真っ先に声を掛けたのは島坂だ。営業課の責任者として総務部長である石井へのフォローが要るのであれば早急に手を打たなければならない。創立記念パーティーに絡んでいるのであれば尚のこと。
しかし山村礼子の答えは予想外のものだった。