NOVEL

彼女がいても関係ない vol.3 ~女子社員同士の脆く危い関係~

新しい人事が発表されたことにより女子社員同士の脆く危い関係が顕わに!

その様子を意味深な視線で見つめていた人物とは?

 


前回:彼女がいても関係ない  vol.2 ~それぞれの休日~

 

 

●新しい風

 

4月に入って最初の月曜日。

株式会社スター・エレクトロニクスでは大幅な人事が発表された。

現社長の桐生道康が高齢のため会長職に退き、それまで副社長だった娘婿の桐生省三が社長に就任したのだ。

 

さらに兼ねてから空席だった営業部長にアメリカ支社から戻った社長の長男が抜擢されたこともあって、社内ではちょっとした騒ぎとなった。

長男の存在は知られてはいたが、支社にいることまでは知られてはいなかった。また写真ですらその容姿を知る者がいなかったから初出となったわけだ。

 

壇上に上がった桐生泰孝は、モデル並みのルックスだった。

女子社員は言うまでもなく男性社員の間でも噂になり、社内が落ち着きを取り戻すまで3日ほど費やした。

社外的な発表は来月に行われる創業記念パーティーの際に発表されるとのことだった。

 

 

「初めまして。桐生泰孝です。アメリカ支社で5年、営業統括を担当してきました。これからよろしくお願いします」

 

全体挨拶の後、営業フロアに姿を見せた桐生泰孝はそう言って頭を下げた。

身長185cm。体重は70kgといったところか。

精悍なルックスに端正な顔立ちの桐生に女子社員は色めき立った。

 

「ね、ちょっと素敵じゃない?」

「本当。文句なしに格好良いわね」

 

営業部だけでなく、違うフロアの女子社員もその姿を一目見ようと用事もないのに営業部のある5階に幾度となく姿を見せた。

 

「大人気だね、桐生くん」

フロアを取り仕切る統括部長の桜井が楽しげな声を上げる。

 

「恐れ入ります」

桐生泰孝は悪びれず、微笑みながら答える。

 

小学校からアメリカ暮らしだったという噂だから、謙遜などという姿勢は持ち合わせていないのだろう。

だがそれすら嫌味なく聞こえるのは育ちの良さだろうか。

 

「結構結構、それぐらいでないと人は束ねられないってもんだ。な、御室くん」

桜井は愉快そうに笑うと後ろに控えていた女子社員に声を掛ける。