すでに多くの美容サロンがひしめく東京では、よほどの後ろ盾がなければ新規参入は厳しいと言われている。
しかし、ナルミには誰にも負けない美しい脚がある。かつて脚を武器にモデルを志した時には叶わなかったが、活かしようによっては、東京という土地は最適だった。
ナルミのサロンでは、美脚用のパーソナルトレーニングは計10回コース。エステもつけると、一人単価20万円を超すが、それでも美を武器に活躍したいと夢見る女性には安いらしい。
ナルミと同じ長さの脚を持つことはできないが、しかし脚の形はトレーニングで、肌の質感や輝きはエステでいくらでも整えることができるとあって、メスを入れない整形だと評判なのだ。
東京の店は週に3日しか開けないが、一か月の収益は名古屋店よりもはるかによく、ナルミ自身、時間の余裕も随分できた。
ナルミの夢である、愛もお金も手に入れて自由に生きる、これがもうほとんど手に入りかけている。あとは……
「神崎さん、今日はお礼も兼ねてるけど、本当は話があって来てもらったの」
ナルミは神崎の腕へとそっと手を伸ばした。
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ナルミのストレートなオファーに神崎の答えは?次回最終回となる第10話!