環と、そして樹里さえ若干驚いた顔を見せた。密はあっさり離婚を認めてくれたのだ。
しかし、離婚を認めてからの彼はまるで別人のように環にもよそ行きの表情を見せた。どこか荒(すさ)んだような冷めた目つきで、環ともろくに目を合わせない。既に他人になってしまったかのようだ。
(ああ、そうか。この人は、自分の名誉と所有物以外、興味ないんだ)
それが分かると、環は余計に涙が滲むのを感じた。何でこんな人と結婚してしまったんだろう……。
腕を放された環はふらふらと樹里の元へ近づいていき、その場でしゃがみこんで泣いた。
環をこの場から助けてくれた樹里は、困惑もしているようだったが、それでも毅然と対応してくれた。まさか、親友にこんなに助けてもらうことになるとは思いもしなかった。
***
そしてしばらくのち、環と密の離婚が成立した。
――しかし、ようやく彼から解放されたと思ったが、悪夢は別のところで続いていたのだ――。
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次回最終回。
密との離婚が成立し一人暮らしを始めた環は昼休憩にカフェで昼食をとっていた。近くに座るOL三人組の話に耳を傾けると聞き覚えのある名前が耳に入ってきた。