NOVEL

2番目の女 vol.2 〜既読にならない週末〜

「愛する人と一緒になれることが1番の幸せ」

小さい頃は、そう思っていた。だけど、何を幸せと感じられるかなんて人それぞれ。

愛する人と一緒にいても、幸せに思えないこともあるんだから。

 


 

前回:2番目の女 Vol.1 ~既読にならない週末~

 

 

大学を卒業した私は、無事広告代理店への就職を果たした。毎朝通勤ラッシュに巻き込まれながら、オフィスに出勤する。大変なことも多かったが、自分がやりたかった仕事ということもあり、毎日がとても充実していた。

 

そんなある日、会社の先輩とランチをしているときだった。

「向井ちゃんって彼氏とかいるの?」

「それがいないんですよ〜」

「そうなんだ、可愛いし気遣いもできる子だから、きっとモテると思うんだけどな」

「今は仕事で精一杯なので」

「じゃあもっと働かせないとね」

 

恋バナは苦手だ。だって話せることがないから。翔太との恋愛なんて話せるわけがないし、翔太以外との恋愛なんて記憶になかった。だから必死で話題を仕事に戻す。もし、大学生のときにまともな恋愛をしていたら、恋バナがもっと楽しかったのだろうか。

きっと、昔の恋愛を忘れるためには、新しい恋愛をするのが1番だ。でも、私は他の人と付き合うことができなかった。会社の人に誘われて合コンに行ったこともあったし、大学時代の男友達からご飯に誘われることもあった。そこで好意を伝えられることもあったけど、どうしても「付き合う」という選択ができなかった。

 

 


 

 

まだ翔太のことが好きなのか、恋愛自体に乗り切れないのか。答えは明白。

「翔太のことが好きだから」

男の人と会うと、どうしても翔太と比べてしまった。

翔太なら、箸の持ち方綺麗なのに。

翔太なら、私の話もちゃんと聞いてくれるのに。

 

翔太なら、翔太なら、翔太なら…。男の人と会うたびに思い出す、翔太の良いところ。「浮気をしていた」こと以外は、まさに理想の彼氏。致命的な欠点だということは分かっていたけど、それでも私は好きだった。

 

大学を卒業してからは、翔太と会うことなんてなかったし、連絡すら取っていなかった。何をしているかなんてわからない。だからこそ、翔太との恋愛は美化されてしまったのかもしれない。

きっとこのまま翔太とは会わずに、私は新しい彼氏でも見つけるのだろう。あとは時間が解決してくれる、そう信じていた。

 

でも私には、新しい彼氏なんてできなかった。気づけば、広告代理店に勤めて10年目。会社でのポジションも上がり、自分が担当する案件もかなり増えていた。新入社員の頃以上に感じる忙しい日々。恋愛なんてしてる余裕はなかった。

家と会社だけの往復。就活中はあんなにワクワクしたオフィス街も、今ではただのビルの塊。そんなある日、1通の手紙がポストに入っていた。