NOVEL

踏み台の女 vol.2 ~気になる人から突然の誘い~


気になるハイスぺイケメン社員から「今日の夜って空いてる?」と突然、食事に誘われた美人派遣OL。彼女の返事は…?

 


 

前回:踏み台の女 Vol.1 ~アユミの気持ち~

 

 

 

 

アユミの会社は名古屋駅。ユニモールの地下街を通って向かうのだが、週に1度、通勤途中にスターバックスに寄ってコーヒーを買うのを習慣にしている。

 会社のコーヒーメーカーも社長のこだわりでなかなかいいものを使っており、一回ごとに豆を挽くため、味も香りもよくその上無料なので普段はそちらで済ますのだが、大学時代からの習慣で、ついスタバに立ち寄りたくなってしまう。

 店内にかかる音楽はJAZZ。商品棚にはウインターシーズンを意識した商品が並んでおり、見るだけでも楽しい気分だ。ポップなマグカップを眺めていると、後ろから「道野さん」と声を掛けられた。

 

「神尾さん!」

  はっ、として振り向くと、黒のジャケットにチェックのマフラーを巻いた神尾がアユミを微笑みながら見下ろして立っている。

「びっくりしたぁ、おはようございます」

「おはよう、道野さんもコーヒー?」

「はい、あ、でも今日は寒いからラテにしようかなと思ってて」

「いいね、おれもそうしようかな」

  と、その時店員から「次の方どうぞ」と声が掛けられた。アユミが進もうとすると神尾が「一緒にいい?」とついてくる。

 「スターバックスラテ、二つ」

  アユミが注文する前に神尾が注文、支払いも済ませてしまう。

 「いいんですか?」

「このくらい気にしないでいいよ、朝から道野さんに会えると思わなかったし」

 

  たかがコーヒー一杯だが、そんなことを言われれば、なんだか特別な気分になる。

「ありがとうございます」とお礼を述べると、神尾が

「そうだ、道野さん、今日の夜って空いてる?」と尋ねてきた。

 「夜ですか? 今日は特に…予定はないですけど」

「金曜日だし、飲みたいなと思って今日車置いてきたんだよね」

 

 営業担当者は車通勤が認められており、駐車代金も経費で処理できるため、ほとんどの営業職は車通勤をしていることが多く、そのまま直行直帰することもある。

 「そういえば、いつも車ですもんね。通勤途中に神尾さんに会うの初めてですし。……ちなみに飲みにって、二人ですか? それとも今日の打ち合わせメンバー誘います?」

  アユミは余裕のふりをしながら、ニコリと笑い、上目遣いで聞いてみる。

 すると、神尾は少しも考えるそぶりを見せず、

 「いや、他の人誘うとどうせ終電逃すまで飲むことになるだろうし、今日はゆっくり飲みたいから、道野さんとおれの二人でどう?」