NOVEL

家にも外にも居場所がない vol.2 ~お見合いという名の審査会~

 

 

今まで異性に興味がなかったのは交遊が少なかったからという訳ではありません。

単純に恋人を作っても親に文句を言われるだろうし、こんな親と上手くやっていける人がいないと思っていたからです。

 

「きっと清美もお相手のことを気にいるわ。それに私たちのためにも、あなたには幸せになってほしいのよ」

 

嫌々という表情を崩さない私でしたが、母にしつこく請(こ)われ渋々お見合いを受け入れました。

 

「よかったわ~。さっそく先方に連絡しないとね!」

 

母は前もって準備していたのか、そこからの行動は早かったです。

週末の休みに八事にあるホテルで食事会を行うことになりました。

その日のために母は知り合いの美容師を呼び、メイクをさせ、服装やアクセサリーも細かく指定してきました。

私は私の意志とは関係ない所で自分を着飾り、お見合い相手に会いに行くのです。

それは本当の私なのでしょうか?

 

 

 

お見合いの当日、憂鬱な私と対照的に母は張り切っていました。

 

「先方に失礼がないようにね? 愛想よく振る舞うのよ? しっかり気に入られるように頑張るのよ?」

「そんなことわかってるよ。子供じゃないんだから……」

 

これではまるで取引先への挨拶です。

いったい誰のために、何のためにお見合いするのかわかりません。

まだお相手に会っていませんが、知らない人に気に入られるためにお見合いを行うものなのでしょうか?

お見合いをする意味に悩みながら、もしかしたらとても良い人であるという可能性に賭けて私はホテルへと向かいました。

 

ロビーに入るとお相手とそのお母さまが先に来ていました。

 

「この度はご足労いただきありがとうございます」

「いえいえ、こちらこそこのような場を設けて頂いて」

 

母とお相手のお母さまは知り合いなのか、気軽に談笑を始めました。ですが私とお相手はどこか居心地が悪そうな、なんと言ったらいいのかわからない距離感でした。

当然です。母たちは知り合いでも当人たちは初対面なのですから。

この時、なんとなくですがお相手のお母さまも子供や周りのことを気にしない、もしくは見えていないタイプなのではないかと思いました。

 

お相手の名前は庄司さんと言い、年齢は35歳で目鼻立ちは悪くなくスーツ越しでもわかるほど体格のしっかりした人でした。

ですが、どこか覇気がないというか、活力がないように感じました。

「本日はよろしくお願いいたします」

「こちらこそ、どうぞよろしくお願いします」

張り付いた作り笑いがある意味、私と同じだったかもしれません。

 

ホテルのスタッフに案内され、席に着き、料理が運ばれてくる。

その間、会話らしい会話はなく親同士がずっと話していました。この子はこうでこういうことが好きで、きっとこういうところが合うと思うのよ、と。

 

話の内容は正直覚えていません。初めてのお見合いで心が躍るわけでもなく、ただただ仕事で接待をしているような、親の為にやっている感が否めませんでした。