結婚して親元から逃げ出したい気持ちはありましたが、庄司さんが好きで結婚したかったかと問われると、疑問があります。
「それにお義母さんに色々と口出しされるのも辛いです。両親には悪いですが、この話はなかったことに。お義母さんには私から伝えておきますので」
こうして、私の初めてのお見合いは失敗に終わりました。
もう茫然自失といいますか、何も考えられず家に帰りました。
玄関から上がると、母に怒鳴られました。
「いったい何をやってるのよ清美! あなたがもっとしっかりしないからせっかくの縁談が台無しじゃない! どうしてくれるのよ!」
母は私の頬を叩き、ただただヒステリックに騒ぎ立てました。
ですが何を言っていたかはよく覚えていません。それどころではありませんでしたから。
私はただ失恋に終わった事実と、親の言いなり、自分で決めることができないと言われたことがショックだったからです。
庄司さんと過ごした日々は楽しかったです。今まで行ったことのない場所に行き、新しい体験ができて、新鮮な気分でした。
親に強制されることもなく、自由な、今までにない楽しみが確かにあったのです。
でも、恋愛として楽しんでいたかというと違うと思います。
ただただ新しいことに惹かれていただけで、人と人との付き合いが楽しかったかというとそうではなかったです。
思えば、新しいことに目を奪われていて庄司さんのことをちゃんと見ていなかったと思います。
それが今回の失恋の原因。
「あんな良い人、他にはいないのに何をしていたの! 本当に情けないったらありはしない! これじゃご近所さんに顔向けできないわ!」
母はずっとわめいています。
でも、私が人と人との付き合いが上手くないことも、新しいことに目を奪われてしまうことも、元はと言えば母が遊ぶことを一切許してくれなかったからではないのかと。
そんな風にふと思ったのです。
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傷心で帰宅した清美を怒鳴りつけ周囲に顔向けできないと泣き崩れる母。そんな母を見て清美は「誰のせいでこうなったのか」と不満を募らせていく…