若菜夫妻の閉ざされた悩み 夫は外資系のエリート会社員なのに…?
前回:勝ち組妻 Vol.4 ~タワーマンション住人の心の内側~
――平日のラウンジは人がいなくてよかったわ。
京子と若菜以外には、利用者はいない。
個人的なことなので、周りには細心の注意を払わなければならない。
京子は視界のすみに、ラウンジの入り口をとらえる。
だが、若菜は周りを気にする様子もなかった。
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お待たせしてすみません。
わたしが夫とどのようにして、結婚まで至ったか、でしたよね。
合コンがあって、しばらくは何の動きもなかったんです。
参加したことも忘れかけていたころ、知らない名前からラインに連絡がありました。
それが、夫です。
最初はわたしの連絡先がどこか悪い人に漏れてしまったのかと、ひやひやしました。
わたしのラインに追加されていない人ですからね。
『いきなりすみません。』
から始まったラインを見たときは、びっくりしたのと同時に、ドキドキしました。
夫は、どうやらあれからわたしのことが気になっていたみたいです。
何かが、彼の心に引っかかったんでしょうね。
いてもたってもいられず、友達から連絡先を教えてもらった、と聞きました。
そのときはもう…うれしかったです。
長年恋人がいなかったわたしのことを、いいな、と思ってくれる人が、ふいに現れたわけですから。
それから、少しの友人期間を経て、2年くらいお付き合いしたのでしょうか。
付き合っているときも毎日楽しかったです。
大きな喧嘩もしなかったし、もちろん彼と別れるという選択肢もありませんでした。
――わたしの目に狂いはなかった。この人に一生ついていこう。
そう決意していました。
だから、プロポーズされたときはこれまでの人生で一番幸せな気持ちでしたよ。
夏の暑いときに、東京まで旅行に行ったんです。
彼はクルーズ船を貸し切って、プロポーズしてくれました。
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若菜がため息をつく。
「懐かしい。」
ふふふ、と声をあげて笑う。