タワーマンション住人の心の内側! 清楚な女性の憂いとは?!
前回:勝ち組妻 Vol.3 ~タワマンのクリスマスパーティー~
ピンコーン♬
ラインの甲高い着信音が鳴ったのは、お昼を少し過ぎたころ。
パーティーから1週間を過ぎたあたりだった。
京子はコーナーソファに座りながら、マリアージュフレールのセイロンティーを片手に、雑誌を読んでいた。
目の前の床をブラーバが横切る。
――誰かしら。
内向的で幼稚園からの親友ともめったに連絡をとらない京子。
ラインで連絡をとるといえば、年老いた両親くらいだった。
『こんにちは』
『クリスマスパーティーでお話しした、若菜です』
『覚えておられるでしょうか』
――クリスマスパーティーで、って言ったら、あの清楚な女性かしら。
『もちろん、覚えています。』
京子が送ると、すぐに既読が付いた。
『突然すみません』
『実は、京子さんにお願いがあります』
――お願い?なにかしら。
『お時間の都合のよろしいときに、一度お会いできないでしょうか』
『聞いてほしいお話があるんです』
――なるほど、そういうことね。
『はい。もちろん、かまいませんよ。』
若菜とは明日の15時に、マンション内にあるラウンジで落ち合うことになった。
――少しでも、力になれることがあればいいのだけれど…。
無機質なラインの文章だけではわからない、若菜の感情の揺れを、京子は癒したいと思った。
今日、幸雄は会食をしてきたので、京子はひとりで夕飯を済ませた。
幸雄が帰ってきたのは、午後11時。
忙しい中でも、夫婦二人でゆっくり過ごす時間はとろう、と幸雄は努力してくれている。
ソファに並んで座り、ロマネ・コンティを飲みながら軽くスモークサーモンをつまむ。
天井までのびる窓から見える景色は、闇にちりばめられた満点の星さながら美しい。
「そうか。明日、会うんだね。」
「そうなの。彼女、パーティーで寂しそうだったから…。心配だわ。」
「気持ちが晴れてくれたらいいね。」
うん、とうなずいた京子の肩に、幸雄はそっと手を回した。