NOVEL

勝ち組妻 Vol.4 ~タワーマンション住人の心の内側~

 

タワーマンション住人の心の内側! 清楚な女性の憂いとは?!

 


 

前回:勝ち組妻 Vol.3 ~タワマンのクリスマスパーティー~

 

 

ピンコーン♬

 

ラインの甲高い着信音が鳴ったのは、お昼を少し過ぎたころ。

パーティーから1週間を過ぎたあたりだった。

京子はコーナーソファに座りながら、マリアージュフレールのセイロンティーを片手に、雑誌を読んでいた。

目の前の床をブラーバが横切る。

 

――誰かしら。

 

内向的で幼稚園からの親友ともめったに連絡をとらない京子。

ラインで連絡をとるといえば、年老いた両親くらいだった。

 

『こんにちは』

『クリスマスパーティーでお話しした、若菜です』

『覚えておられるでしょうか』

 

――クリスマスパーティーで、って言ったら、あの清楚な女性かしら。

 

『もちろん、覚えています。』

 

京子が送ると、すぐに既読が付いた。

 

『突然すみません』

『実は、京子さんにお願いがあります』

 

――お願い?なにかしら。

 

『お時間の都合のよろしいときに、一度お会いできないでしょうか』

『聞いてほしいお話があるんです』

 

――なるほど、そういうことね。

 

『はい。もちろん、かまいませんよ。』

 

 

若菜とは明日の15時に、マンション内にあるラウンジで落ち合うことになった。

 

――少しでも、力になれることがあればいいのだけれど…。

 

無機質なラインの文章だけではわからない、若菜の感情の揺れを、京子は癒したいと思った。

 

今日、幸雄は会食をしてきたので、京子はひとりで夕飯を済ませた。

幸雄が帰ってきたのは、午後11時。

忙しい中でも、夫婦二人でゆっくり過ごす時間はとろう、と幸雄は努力してくれている。

 

ソファに並んで座り、ロマネ・コンティを飲みながら軽くスモークサーモンをつまむ。

天井までのびる窓から見える景色は、闇にちりばめられた満点の星さながら美しい。

 

「そうか。明日、会うんだね。」

「そうなの。彼女、パーティーで寂しそうだったから…。心配だわ。」

「気持ちが晴れてくれたらいいね。」

 

うん、とうなずいた京子の肩に、幸雄はそっと手を回した。