セレブ向けの一流ホテルと言えば、「ヒルトン」や「マリオットグループ」などの欧米資本の最上級ラグジュアリー系大手外資チェーン、さらに、東南アジアを中心に展開するリゾート系に強い「アマングループ」などがあります。
また、日本発の「星野リゾート」も最近話題になっています。これらの一流ホテルの数々は、セレブと呼ばれる人たちの心を掴んで離しません。
目次
おもてなしの心がホテルへと変化
「ホテル」の語源は、「旅人・客・宿主」を意味するラテン語の「ホスペス(hospes)」であると言われています。
ホスペスは、中世のヨーロッパにおいて十字軍の兵士や旅人が宿泊するために、教会や修道院が作った施設のことでした。
十字軍の兵士や旅人たちが、疲れ果ててその施設の扉をたたいた際、その施設では快くそれらの人々を受入れてくれました。
このホスペスから分かれて生じた言葉に「手厚いもてなし」を意味する「ホスピタリス(hospitalis)」があり、これが変化して、英語やフランス語の「hotel」(ホテル)や「hospital」(病院)という言葉になりました。
つまり、「ホテル」とは単に寝泊りができる場所ということではなく、宿泊する人のことを思いやり手厚いもてなしをするという意味を持った場所のことなのです。
現代の高級ホテルの歴史の始まり
その後、長い歴史を経て、現代のホテルのような設備やサービス、システムを導入した、一流ホテルが誕生していきます。
その歴史を語る上で、避けて通れないホテルが「リッツ」になります。
「リッツ」と聞くと、アメリカのホテルチェーン「マリオットグループ」のブランドのひとつである「ザ・リッツ・カールトン」を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、今から説明する「リッツ」とは、関係がない訳ではないのですが、ちょっと違ったものになります。
とてつもない努力と奇抜な発想が原点 セザール・リッツ
「リッツ」の創設者である「セザール・リッツ(César Ritz)」は、19世紀に活躍したスイス・フランスの実業家であり、パリの「ホテルリッツ」やロンドンの「リッツ・ロンドン」「カールトンホテル」の経営で大成功を収め、「ホテル王」と呼ばれた人物です。
1850年にスイスの片田舎に生まれたリッツは、15歳で地元ホテルのボーイとなることで、ホテルマンとしての人生をスタートさせます。その後、フランスのパリで開催されていたパリ万国博覧会のスイス館で、軽食の給仕をした後、パリのホテルで職を得ます。
さらに、パリで名高い一流レストランでウェイターの仕事に就き、20歳で支配人に抜擢されるという快進撃を続けますが、1870年代の普仏戦争によりパリは深刻な食料不足に陥ってしまいます。
しかし、それを商機とするところが成功者の所以たるもの、リッツは動物園から2頭のゾウを買い取り、それを切り売りすることにより商売を成り立たせたのです。
多くの人の空腹を満たしたこの一件によって、リッツの名は広く世間に知られるようになったといわれています。
潔癖症が現代ホテルの基礎を築いた
その後、モンテカルロのホテルの支配人になったリッツは、そこでも敏腕を振るいましたが、コレラが蔓延したことにより、ホテルの客足はすっかり遠のいてしまいます。
コレラの蔓延はリッツ自身に大きな影響を与え、リッツは極度の潔癖症になり、衛生面に関して異常なほど厳しくなっていきます。
そのことにより、リッツはトイレや風呂が共同だった時代に、自分が管理するホテルの各客室にトイレとバスタブを完備させます。
これはホテル界初の試みとなりました。さらに、掃除や洗濯を徹底させて室内を衛生的に保てるように、客室のカーテンを取り払ったり、ベッドを真鍮製の物に替えたりしました。
各客室にトイレとバスタブが完備されているということは、現代のホテルでは当たり前となっていますが、これらはリッツの潔癖症によるおかげだったのかもしれませんね。
高級ホテル化へのきっかけは妻へのコンプレックス
37歳になったリッツは、働いていたグランドホテルのオーナーの姪で20歳の「マリー・ルイーズ」とカンヌで結婚します。
妻はモンテカルロ育ちの洗練された女性であり、グランドホテルのオーナー一族である妻の一族も、みな上流階級に属しています。
妻や妻の一族との社会的階級差にコンプレックスを感じたリッツは、地位を欲して、カンヌにあった「オテル・ド・プロヴァンス」やドイツのバーデン=バーデンにある「ホテル・ミネルヴァ」を次々と買収していきます。
さらに、ロンドンの「サヴォイ・ホテル」でも働くことになり、ローマでは「グランドホテル」の設計にも着手しました。
リッツはこのホテルにルームサービス用の調理場を作ったり、エレベーターを設置するときのためのスペースを確保したりするなど、将来を見据えた設計を行っています。
様々なホテルで経験を積んだリッツは、「ホテルはお客様に満足を売る」というサービス哲学のもと、斬新なアイデアをたくさん考案して、高級ホテルのあり方を確立しました。
妻と妻一族へのコンプレックスが、リッツを動かす原動力となり、関わってきたホテルの高級化へと繋がっていったのかもしれません。
セレブと言われる人たちのホテル観
世界で有名なセレブと聞くと、豪華な生活を思い浮かべ、そのお金の使い方も豪快で、買い物やグルメに大金を浪費しているイメージがあるかもしれません。
モノではなく体験が重要
贅沢し放題といった印象のあるセレブですが、とてもシンプルで質素な生活をしているセレブ層も多数います。
そして、セレブと言われる人たちのお金の使い方には、共通した特徴があり、生活に無駄なお金はかけないのです。巨額の富や名声を手にすると、モノでは幸せ度が上がらなくなってくるのです。
アメリカ合衆国の投資家であり資産家でもあるウォーレン・バフェットは、「お金で幸せは買えない」と言っています。
その分、自分の経験への投資にはお金を惜しまない傾向が強く、快適なホテルライフのためにはどんな出費でも厭わないセレブが多いのです。
贅沢なホテルライフに飽きてみたい
一度は名前を聞いたことがあるような誰もが憧れる超一流ホテルは、実際に富裕層セレブたちの宿泊先として注目を集めています。
しかし、セレブ生活を長く送っている人たちや、ビリオネアと呼ばれるような大富豪たちは、すでにこれらの超一流と呼ばれるホテルライフに飽きているケースもあるそうです。
そのような人たちは、一般の人たちにはあまり知られていない隠れ家的なホテルで、非日常の生活を楽しんでいるのです。
今回は、ホテルの成り立ちや一流と呼ばれるホテルの歴史、セレブとホテルとの関係のあれこれについて説明してきました。
知れば知るほど奥深い一流ホテルの世界、次回は、ホテルの格付けの不思議や世界中にある王室やセレブ御用達のホテルについて紹介していきたいと思います。
次回:「隠れ家ホテルライフこそが人生の贅沢 絶対外さない!一流ホテル」をお送りいたします。お楽しみに!