上質なサーヴィスと心地よい空間、そして美味なる料理を前に、人は無防備だ。大切なビジネスの商談をしたいとき、仲間を労いたいとき、意中の異性に近づきたいとき。シーンに応じて飲食をする店を選ぶことで、相手との心の距離を近づけようとする。
そしてそこには、ちょっとした驚きも効果的な演出だ。たとえば、「鳥さわ」のように洗練された空間で、親しみやすい焼き鳥という料理を存分に味わうなら、そのギャップが嬉しいサプライズとして食事のひとときを演出してくれるだろう。
高知県産“無玄地鶏”を部位ごとに味わう
名古屋駅を東に徒歩約10分。江川線の「泥江町」交差点からほど近い場所に、ひときわ目を引くガラス張りのビルが見える。その1Fに店を構えるのが「鳥さわ」だ。
いわゆる大衆的な焼き鳥店のイメージとはかけ離れた、スタイリッシュでラグジュアリーな大人のための空間。店内は丸みを帯びたフォルムが印象的でどこか心が安らぐ。鳥の巣をイメージしていると聞けば、なるほどとうなずく他ない。
この店では高知県のブランド鶏・無玄地鶏を丸ごと一匹仕入れている。希少な部位をはじめとして骨まで無駄にすることなく幅広く味わうことができるという点では、実に魅力的だ。
その日の入荷次第で出会える味を楽しみにしてもいいが、オタフクやハラミ、背肝などの希少部位をお望みならば事前に予約を入れておくのがベターだろう。
そしてカウンターには、彼が対峙する。
店長兼料理長の安達大輔氏。県内外の焼肉店に勤めたのち、同店の母体である精肉店『朝日屋』に入社。「鳥さわ」オープンに伴い、四国へ赴いて無玄地鶏のノウハウを学んだ、いわば“肉一筋”の人である。寡黙な出立ちが、なんと調理場になじむことだろう。
これまで牛、豚、鶏とさまざまな肉を扱ってきた彼に、肉料理の魅力とはなにかと問うた。しばし思案したのち、安達氏はこう答える。「肉は、部位ごとだけでなく、調理法よっても味わいが変わります。さらに言えば、最後はお客様ご自身がお好みの調味料で召し上がる。そういう意味では、お客様と一緒になって初めて、完成する料理なのかもしれません」。
言葉では、多くを語らない。彼の哲学はその一挙手一投足に現れる。彼の言葉を借りるならば、今宵だけは料理を待つ身ではなく、ともに料理を“完成”させる身として、至極の一品と向き合いたい。
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<店舗情報>
焼とり 鳥さわ 名古屋店
名古屋市中村区名駅三丁目21-7
052-562-1129
17:00〜24:00(L.O.23:00)
無休
https://www.xn--ogt56tz0a.com/torisawa-nagoya/index.html
※新型コロナウイルス感染拡大により、営業時間・定休日が記載と異なる場合がございます。ご来店時は事前に店舗にご確認ください。
<後編へ続く>2月24日更新予定
▶静謐な時間がもてなす大人の焼き鳥。「焼とり 鳥さわ 名古屋店」<後編>