“素材の妙”を生かした鮮やかな一皿
マットな質感を帯びた黒いプレートに、鮮やかな色が互いを引き立て合うように散りばめられている。
この一皿に“意外な素材の数々”が使われていることは、一目見ただけではわかるまい。まずは、蝶を象った黄色い焼き菓子の下にある、白いアイスクリーム。これはなんと、碧南市のみりん蔵で造られたみりん粕でできているという。「戦後の貧しい時代から、みりんは甘みを感じる貴重な調味料でした。みりん粕も、当時はおやつ感覚で口にしていたようです」と、山内氏が補足を加えてくれる。
捨てるところなく、余すところなく、無駄なく使う。
そんな、古き良き日本人の美徳を、このアイスクリームひとつで考えさせられるとは。
渋みを帯びたグリーンのソースには、西尾市の名産品・抹茶を使用。一口サイズに切りそろえられたイチゴは岡崎市の山田農園のもので、農薬不使用で育てられているという。あしらわれた季節のフルーツひとつにも、山内氏の妥協はない。
ひときわ存在感を放つ筒状のスイーツに、ナイフとフォークをあてがう。
そっと力をこめると、パキッと軽やかな音を立てて割れ、中から3種の異なる味わいが顔を覗かせた。
「チョコレートムース、レモンのゼリー、豆味噌のカスタードです」との山内氏の言葉に驚き、思わず単語を鸚鵡返ししてしまった。
滑らかな口当たりのチョコレートムースのあとには、さっぱりとしたレモンのゼリー。そして、ほんのりと豆味噌の塩味を感じるカスタードクリームと、代わるがわる味が楽しめる。豆味噌は武豊町の味噌蔵のもので、これも山内氏が愛用する素材のひとつだ。
味噌だけではない。野菜も、果物も、調味料も、それぞれ生産者のもとを訪れ、その製法や特徴を学び、独自の観点で“自分らしさ”へ昇華させていくのが、氏の流儀だ。こんなにも、愛知の食の魅力に気づかされる一皿はなかなかお目にかかれない。彼の料理が海外の人の舌を驚かせたというのも実にうなずける。
全ては山内氏の料理のコンセプトである「地産知称」に基づいているからに他ならない。
彼自身、宮崎県の自然が多い土地に生まれ、親族に農家がいたということもあり、季節の移り変わりやその土地で育つ農作物のたくましさや滋味を、肌で感じて育ったという。
料理人を志してからも、海や山にたびたび出かけ、自然の中に溶け込むことでありのままを感じ、己の料理の在り方を追求してきた。
「料理を通じて自分にできること。それは、食材の環境を整えることです。未利用素材と言われるものも積極的に活用したり、海や山、大地の資源を無駄なく使って循環させたり、意外な組み合わせで素材の持ち味を感じられるように工夫したり。ただおいしい、だけではなく、その先にある価値観にも気付いていただけたらうれしいですね」
山内氏の手がける一皿には、愛知の人が、いや、世界の人ですら驚く食の魅力が込められていた。
現在はさらに活躍の場を広げ、みりんや味噌などを使ったチーズケーキや、半田で醸された酒粕の風味を生かしたバームクーヘンなど、物販の方面でも精力的だ。
彼の活躍は留まることを知らない。そんな話もまた、料理を引き立てる一役となって、訪れる人を楽しませ続けるのだろう。
店舗情報
店名 | レスト ケイ ヤマウチ(RESTAU K YAMAUCHI) |
---|---|
お問い合わせ | 052-222-6252 |
住所 | 愛知県名古屋市中区錦2-12-21 錦カナアンビル 3 |
営業時間 |
12:00~15:00(LO12:30)
|
定休日 | 火曜日 不定期で連休あり(詳しくはホームぺージをご覧ください) |
駐車場 |
無 |
HP |
新型コロナウイルス感染拡大等により、営業時間・定休日が記載と異なる場合がございます。ご来店時は事前に店舗にご確認ください。