GOURMET

シメで味わう和の美学。「割烹良」<前編>

食事のシメは、大事である。

その日限りの食材や料理との出合いを大切にすればするほど

「その食事のシメになにを食べるか」は重要な意味を持つようになってくると思うのだ。

それが、料理人の思いやこだわりが込められた一品ならなおのこと。

後味のいい映画のように、美しい旋律の余韻のように、食べた人の心にずっと残り続けるのではないだろうか。

食通好みの居心地の良さと繊細な和食

 

名古屋市中区錦の繁華街。

飲食ビルの2Fにひっそりと看板を掲げるのは、その日に仕入れた食材でつくる繊細な和食がいただける「割烹良」だ。

洗練された和の空間が、訪れる人の心を和ませてくれる。

店に入ってすぐ目に入る立派なカウンターは、樹齢800年のヒノキを使っているという。

なんでも、名古屋城の本丸御殿に使われる予定だった木材だとかで、

この店が競り落とした当時は、この界隈ではその話題で持ちきりだったそうだ。

先代から数えると創業70年にもなる同店。名店に逸話あり、とはかくも言ったものだ。

 

 

 

 

ひとりでふらりと訪れるならばカウンターで大将と話しながら気軽な食事もいいが、

大事なビジネスの席やもてなしたい相手がいる場合は個室もおすすめだ。

掘りごたつとテーブルがあり、相手によって選べるのもうれしい。

カジュアルに楽しめる昼の懐石もあるので、忙しい大人がほっと一息つくのにもちょうどいい。

 

この店の味を決めるのは、大将の榎本道泰氏。

和食一筋で50年以上にもなる一流の料理人だ。

名古屋や京都、大阪などで研鑽を積んできた榎本氏であるが、そんな彼をもってしても「日本料理はまだまだ学びが多い」と話す。

「古くから日本に伝わる伝統的な料理ですが、土地だけでなく時代によっても味付けや調理法が異なります。

例えば冷蔵庫がなかった時代では、保存がきくように味の濃いものや昆布でシメたものがほとんどでしたでしょう。

時代が進むにつれて味そのものは薄味になってきたと感じますが、

意表を突くような素材の組み合わせなどで面白いなと感じることもあります。

底が見えなく、興味が尽きない。死ぬまで追求しがいがあるというものです」。

これだけ和食に一意専心でありながらも、どこまでも謙虚な榎本氏。

そんな彼の作り上げる料理の「シメの一品」にはやはり、彼が“彼たる所以”であることがうかがえた。

 

 

<店舗情報>

割烹 良

名古屋市中区錦3-14-32 ROSE錦ビル2F

052-959-3944

11:3014:0018:0022:00

日・祝休

http://kappoh-yoshi.com/

 

※新型コロナウイルス感染拡大により、営業時間・定休日が記載と異なる場合がございます。ご来店時は事前に店舗にご確認ください。

 

<後編へ続く> 

 

後編:2月3日更新予定

 シメで味わう和の美学。「割烹良」<後編>