写実的でありながら、デザイン化されたモチーフはどこかロマンティック。
そしてイノセントな雰囲気を放つ色彩に加え、立体的かつ奥行きのある刺繍は、瑞々しさを称えていながらも凛とした品を感じる。
これらは、2022年1月にOPENしたばかりの帯ブランド『iromoyou』の刺繍帯のことである。
帯といえば、西陣織の豪華絢爛な帯や逆にいかにも静かでわびさびを感じる色彩や、日本的な和柄をイメージする方も多いのではないだろうか。
『iromoyou』は、オートクチュールでも用いられるフランスに伝わるリュネビル刺繍という技法を使って「和」のイメージを離れ、デザイナー自身の感性に従ってデザイン展開をしているという。
主宰者兼デザイナーの下田さんは、元々ご自身が長年の着物ファンだそう。
「和装が放つ、凛とした雰囲気が大好きなんです。好き過ぎて京都の和装業界に飛び込み、着物作家の下で数年修行したほどです(笑)。
そして好きだからこそ、見えてきたことが多くあります。
受継いでいくべき素晴らしい伝統が実際にたくさんあります。しかし良いところはそのままに、でも新しい息吹も和装界の中に取り入れていくべきなんじゃないか。そうしなければ着物は本当に、一部のファンだけのものになってしまう。一部のイベント事に着用するだけのツールになってしまう。そんな危機感をいつからか抱くようになりました」
下田さんは着物も好きだが、さらには洋服やインテリアにも興味津々な“おしゃれ好き”な女性なのだそう。
「わたしは世間一般的な、ごくごく普通の“女子的感覚”を持っていると思っています。呉服屋さん等着物に纏わるような特別な世界で生まれ育ったわけではありません。着物や帯を一着買うことのハードルの高さもよく理解しているつもりです」
だからこそ、ブランド『iromoyou』の立ち上げにはこだわったコンセプトがある。
《和装と洋装の垣根を無くし、ファッションとして捉える》
ファッションとして捉えることで、ただただ「あ。この帯かわいい」「あ。この刺繍かわいい」と思ってもらえることが大事だという。
「“あ、かわいい。好きかも。” そんな直感めいたものがきっかけとなることもあると思うんです。
しかし興味が沸いたところで、「着物ならいいや」となるんじゃ意味がない。
“和装も洋装も関係なく、自分が素敵だと思うものを身に付けて、自由な発想で楽しもう♩”
そんなライフスタイルの概念まで、わたしは伝えていきたいなと思っています。だって、せっかく日本に生まれたのだから。洋服を毎日着るのもいいけど、たまにお着物を着てランチも良いじゃないですか。
その為にも、オンラインショップには和装洋装どちらでも使える小物アイテムを置いたり、SNSではお着物初心者のための相談会なども開いたりしています」
着物の難しいルールのことなども、下田さんは笑って吹き飛ばしていいと考えているそう。
着物だからとか和装だからとか、そういうルールやカテゴリ分けに括らず、好きなものを身に着ける。ファッションを純粋に楽しむ。
それが『iromoyou』ルールの根底にあるならば、古い価値観に捉われない多様性が求められている新しい時代の流れと感性を、ついここにも感じてしまった。
日本の美しい文化を、新しい息吹を感じながら興味を持って見守っていきたい。
▼『iromoyou』 HP
https://www.instagram.com/__iromoyou__/