「相変わらず仲が良さそうでよかった」
「愛沙は彼氏とはどんな感じ?」
「うーん、あの人とは別れちゃった。なんか、わたしといても楽しくないんだって」
「そうかなあ。わたしは愛沙といると楽しいけどな。彼とは合わなかったんじゃない?」
そうかも、と小さく呟く。
「…それよりね、実はわたし、婚活始めたんだ」
愛沙は加菜に、最近本格的に結婚相手を探し始めたこと、結婚相談所で出会った人とデートをしたことを伝える。
「えー!何それ!初耳!いいじゃん、いいじゃん!で、その人とはどうなったの?」
「1回デートしてお互いにいいなってなったから、また今度会うことになったよ」
駒沢と初デートの後、彼からもOKが出たようで、先日仮交際が始まった。
興奮していた加菜は、ふと冷静になって言った。
「あれ?でも、なんか愛沙疲れてる?テンション低いけど。どうしたの?」
「そう?そんなことないよ」
加菜が口を開きかけたとき、ちょうどアミューズが運ばれてきた。
サーモンがきゅうりで巻かれ、その上に刻んだ玉ねぎが乗せてある。
ハーブと赤いペッパーが彩り良く添えられていた。
愛沙はウエイターが去るのを確認する。
「食べながら聞いてほしいんだけど」
加菜がこくりと頷き、こちらを見つめる。愛紗は少し声を落として言った。
「はっきり言って、わたし容姿には自信あるのよね。そのための努力も我慢もしてきたし、お金だってかけてきた。でも、パーティーに参加して、わたしが良いと思った人が追いかけてこなくて、こんなことってあるんだって初めて思ったの」
加菜は料理を口に運びながら、黙って聞いている。
「最初は何でよって腹も立ったし、悔しかったけど、でも他に男なんていくらでもいるし、そんなのどうでもよくなっちゃった」
今まで抱えていた感情を一気に吐き出す。
「わたしね、絶対男に妥協はしたくないの。誰よりも素敵な男性と結婚して、真奈美や両親に〝婚活でこんなに良い男性と結婚できてよかったね″って言わせたいの」
両親や妹に見下されたくない。
がっかりされたくない。
完璧な人に会って褒められたかった。