その疑念とは「浮気をしているかもしれない」という疑惑だった。
いや、そんなはずないわ。
何かの間違いよ…。
そう思いながらもなぜか確信が持てずに、再び良からぬ考えが脳裏を過る。
こうして、そんな不安に押し潰されそうになりながらも私は食卓に着き、早苗さんが作ってくれた食事を口に運ぶ。
でも…。
「どうしたのですか、奥様?食欲がないようですが、体の具合でも悪いのですか?」
「あ…ご、ごめんなさい…そういうわけじゃないの。ただ少し考え事をしてて…」
「あの…もしかして何か悩み事ですか、奥様?」
「そ、それは、その…」
突然、図星を突かれてしまい口籠る。
誤魔化した方が良いのだろうか?
それとも…。
「ええ…実はそうなの。早苗さん、悩みを聞いてもらえるかしら?」
一瞬、話そうか悩みはしたものの結局、自分一人では抱え込めないと悟り、早苗さんに悩みを打ち明けようと覚悟を決める。
そして、昨日クリーニングできずにいたハンカチを戸棚の引き出しから取り出し、彼女に手渡した。
「早苗さん、これ…どう思う?」
「これは…旦那様のハンカチですか?それにこれは口紅?」
ハンカチを受け取った早苗さんは、それを見つめたまま突然、黙り込む。
不意に訪れる無音の時間。
その時間は実に、心に不安を感じさせるものだった。
それから、一分前後の時間が経過しただろうか…?
とても長く感じられた…その静かな時間は突然終わりを告げる。
その静けさを終わらせたのは、早苗さんの一言だった。
「奥様は、旦那様が不誠実なことをなさると思いますか?」
「分からないわ…。信じたいけど…でも…」
少し口ごもりながらも私は何とか、彼女の問いに答える。
しかし、その直後、早苗さんは優しく微笑みながら私に告げた。