NOVEL

運命の輪 vol.8~ざわめき~

202X年6月11日 日曜日 午後5時

 

同窓会当日は梅雨の晴れ間で晴天。

場所は名古屋城近くの洒落たビストロだ。

この季節、運が良ければホタルを見ることができるという評判のお店だった。

 


前回: 運命の輪 vol.7~ぬくもり~

はじめから読む:運命の輪 vol.1~動きだす時間

 

  • 再会

会場には、少し早めに到着した。

由衣から受付を頼まれたからだ。                          

小学校卒業以来、誰とも接点がなく誰が誰だか分からない紗希には寧ろありがたかった。名簿を見ながら確認ができる。

 

「久しぶり!」

「きゃー、懐かしい!」

「変わってないな」

 

あちらこちらで歓声が上がる。

紗希も、ひとしきり受付で洗礼を受けた。

「紗希ちゃん?本当久しぶり!元気だった?」

「どうしてたの?」

紗希を見て、一瞬驚いた様な表情をする同級生も少なくなかった。

20年ぶりだからだろうか。

 

「ごめんね、紗希ちゃん。手伝ってもらっちゃって」

忙しそうに動き回っている合間にも由衣は受付にやってくる。

「ううん、大丈夫。楽しんでるから気にしないで」

「本当?無理しないでね。あとちょっとだから」

 

4時55分。

欠席の連絡をくれた数名を除いて、ほぼ揃ったようだ。

担任の後藤先生には30分遅れで集合時間を伝えている。

 

紗希は名簿を見返しながら、懐かしい名前に目を留めた。

「坂本克哉」

欠席とも出席とも書かれていない。

連絡がつかなかったのだろうか?

 

その時、扉が開く。

「先生!お久しぶりです」

「変わってない!!」

会場から声が上がる。

「おお!みんな、集まっているな」

大柄なところは変わっていない。

黒ブチ眼鏡もそのままだ。

 

周りを見渡してニコニコ顔で話しかけている。

ぐるっと顔を回した後藤先生が、受付に居た紗希を見つける。

「宮田か?綺麗になったな!」

分からないだろう、そう思っていた紗希の予想は外れた。

「変わらないな!うん、元気そうだ」

「お久しぶりです」

頭を下げて挨拶する紗希を見て、笑顔を見せた。