NOVEL

夫婦のカタチ vol.3~孤独な籠~

私は康平に申し訳なさを感じながら折り返しの電話を鳴らした。

ワンコール目ですぐに出る康平。

私は今日起きてしまった出来事と勇希の様子を謝りながら伝えた。

 

「まぁ無事ならいいから。とりあえず早く帰ってきな」

康平の聴き慣れた声を耳にして、私は急に今日1日の緊張が解れた気がした。

すっかり泣き疲れてしまった勇希と2人。

タクシーでウトウトしながら家路に着いた。

 

マンションに着き、エントランスでインターホンを鳴らす。

 

すると予想外の甲高い女性の声が返ってくる。

 

この声は・・・間違いない。

義母の声だ。

でも、なんで急に・・・。

エレベーターが昇るにつれて私はなんだか胸騒ぎがした。

 

私と勇希が家にもいないし電話も出ない。

康平から連絡を受けた義母は急いで駆けつけて来た。

そんなところだろう。

 

ドアノブを握ると中から義母が扉を開けながら話し出す。

「勇希〜!お怪我はどこ?!あら痛そうに。可哀想な子」

「奈緒美さん、勇希が怪我して救急車だなんて、あなたは仕事も行かず、子供を見守ることもろくにしてないのね。康平のお嫁さんになれたのにあなたは一体何をやっているの!」

 

たしかに私は勇希が走り出したとき手を繋ぐことをしていなかった。

ほんの一瞬だけれども、目を離してしまった。それは確かだ。

 

だから私は何も言えず、ただただ「すみません・・・」と謝ることしか出来なかった。

そんな素直に謝る自分に、とても情けなくなる。