最初から長く続く関係ではないとわかっていたはず。
深入りはしてはいけない。
なのに幸枝はCのことが気になってしまう・・・?
前回:引きこもり女の裏側 vol.8 ~誰にも言えない楽しみ~
Cは物静かな人のようで、部屋に向かうまでほとんど喋らなかった。
―若そうだし、遊びたいのかな?見た目いいしモテるんだろうな。
プライベートには突っ込まないつもりだったが、単純に不思議に思う。こういう子とできるなんてラッキーかも、と内心興奮しながら、部屋に入った。
部屋は、和テイスト。
部屋の真ん中に置かれた座敷は掘りごたつ式になっていて、4人は座れる。赤い和紙で作られたペンダントライトは、金粉がちりばめられているようだ。奥には金屏風も飾られている。
Cは部屋を眺めるでもなく、すぐに荷物を置いて座敷に座る。
「先にお風呂入りますか?」
いつものように聞く。
Cはゆっくりと顔を上げる。
「いえ。僕はいいです。できれば、このまま始めたいんですが。」
幸枝は耳を疑った。
えっ、と声に出ない形だけの驚きが漏れる。
「それって、わたしも入らないってことですか?」
「だめですか?」
うなずき、いかにも普通、という表情で聞いてくる。
「え…わたしは、そういうのは興味ないです。」
「そうですか…。じゃあ、ゆくゆくですね。」
そう言って立ち上がると、
「お風呂入ってきますね。」
と何事もなかったようにシャワールームへ行った。
―ゆくゆくって…。
幸枝は、要求に応えなければならないときがくるのかと複雑な気持ちになった。
Cは細身ながら、その体は筋肉で引き締まっていた。若さを感じさせる肌も、スベスベでハリがあった。幸枝に触れる手も、優しい。反対にどこか闇があるような、じっと見つめていると引き込まれる瞳。キラリと光って見えたのは、薄明かりの照明のせいだろうか。