NOVEL

Silver Streak vol .3~思いがけない再会と渡された名刺。変わりなく過ぎていく毎日に訪れた刺激とは…?~

突然の再会に驚きながらも、周りの目が気になって肝心なことが聞けないまま別れることに。美果は別れ際握らされた名刺をぼんやりと見つめるが…。

前回:Silver Streak vol.2~スイートルームで暮らす何不自由ない女性。キャリアも順調な彼女をいきなり掴んだその男は…?!~

はじめから読む:Silver Streak vol.1~スイートルームから毎朝出社する女性。ホテルのバーでの思わぬ出来事とは?~

 

 

 

スマホを取り出し、SNSの画面を開く。IDQRコードを読み取らせようとしたところで手が止まった。

連絡したところでどうしようというのだろう。

なぜ美果がここに滞在していることを知っていたのかを聞いたところで何か変わるだろうか。

今は友人とはいえ、かつてよく知っていた男である。

不穏なことは起こらないまでも結婚した今、連絡する必要はないかもしれない。

スマホを操作しないまま眺めていたのでロック画面に切り替わる。

…連絡しなくてもよいかな。

名刺の皺を綺麗に直してから手帳のポケットにしまった。

今日は少し飲み過ぎてしまったのかもしれない。明日も仕事だしもう寝よう。

そう考えている間に美果はソファで眠りに落ちたのだった。

 

「で?結局連絡しなかったわけ?」

ハイビスカスティーが入ったカップに口をつけた直後に加奈子が言った。

外からのやわらかい光に照らされる透き通った紅色が美しい。

少し刺激的なその色が彼女とセットになっているようだった。

ホテルのロビー階にあるカジュアルレストランの窓側。テーブル同士の間隔が広めにとられているのが気に入っている。

両端に他の客がいないのでさっそく新一の話をしたのだった。

「ええ…連絡したところで変な展開になっても困るし」

「期待しているってこと?」

それは図星だった。

連絡をして何事もなくただ近況報告するのであれば気が抜けてしまう。

一方で何かを求めている訳でもない。

マンネリ化した生活に飽きて他の男性とのやりとりを楽しむ友人はいるが、美果は現在の結婚生活に不満があるのではないのだ。

どちらかというと面倒に感じるし、そんなことに使う時間があればキャリアのことを考えたい。

しいて言うならば、名刺を半ば強引に渡したことに多少なりとも期待してしまった自分を拍子抜けさせるような展開は望んでいない。

そんな心情をすべて加奈子さんに共有したのだが、彼女の選択は一つだった。