NOVEL

2番目の女 vol.3 〜既読にならない週末〜

 

扉の先には、まさに大和撫子というような綺麗な女性。

翔太の奥さんを見るのは初めてだったが、一目見ただけで「勝てない」と実感した。

そりゃ私が1番になれないわけだ。

 

「急にすみません、翔太くんに連絡したんですけど返事がなかったので勝手に押しかけてしまいました」

 「こちらこそわざわざすみません、翔太さん、携帯全然見ないみたいで」

 

完全に私が勝手に押しかけただけなのに、快く迎えてくれる奥さん。

そして部屋の奥から翔太が姿を表した。私の姿を見た翔太は、驚きの表情を浮かべている。

 

「翔太くん、久しぶり」

 

精一杯の作り笑顔で話しかける。あくまでも、私たちは同窓会ぶりに会った友達。それ以上でも以下でもない。

 

「久しぶり、元気だった?」

 「元気だよ。ごめんね、急に押しかけちゃって」

 「いや、俺も久々に友梨ちゃんに会えて嬉しいよ」

 

他愛もない話を交わす私たちを奥さんは微笑ましい笑顔で見ていた。

 

 

その表情を見て確信した。

翔太を奪う隙なんてないし、きっと奥さん以上に私は翔太を愛することはできない。

 

「せっかくだし、ご飯食べていきません?友梨ちゃん、だっけ」

 

立ち話をしている私たちを見て気さくに話しかけてくれる奥さん。

私は言葉に甘えて、夜ご飯をいただいていくことにした。

 

翔太の奥さん、子供と一緒に囲む食卓。誰かの手料理を食べるのは久しぶりだった。

 

「美味しい?」と聞いてくれる奥さん。

本当に美味しくて、落ち着く味。こんなに料理上手な人と結婚できるなんて、翔太は本当に幸せ者だと思う。

幸せな表情は翔太からも溢れ出てて、頬を思い切り緩ませながら奥さんの手料理を食べている。

 

子供の海斗くんも「ママのカレーが1番好き」と言いながら頬張っている。

何気ない日常かもしれないけど、こんな毎日を過ごせたらどんなに幸せだろうか。

素敵な日常を過ごしている翔太が羨ましくなった反面、私が翔太を幸せにしたいという思いが芽生えた。

 

もしかしたら、翔太が家族でいる姿を見れば、諦めがつくかもしれないと思った。

だけど、家族といるときの翔太を見たら、余計に離れられなくなった。

それくらい、家族でいるときの翔太は幸せそうで、私と一緒のときには見たことがないような笑顔を見せていた。

 

その笑顔の先にいるのが私だったら…

 

だけど、私がどんなに見つめても翔太が見ているのは私じゃない。

翔太の恋物語の主人公は私じゃない。

ヒロインから彼を奪おうとする悪役。私の恋は誰にも応援されない。

 

 

 

next:1月25日更新

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